Alabaster Deplume「To Cy & Lee: Instrumentals Vol.1」(International Anthem)
マンチェスター出身で現在ではロンドンを拠点に活躍するサックス奏者/編曲家/アクティヴィストのアラバスター・ デプルーム(Alabaster Deplume)。 日本の民謡やケルト民謡からニューヨーク・アンダーグラウンドを代表する、アーサー・ラッセル、さらには「天空の城ラピュタ」など日本のアニメのサントラまで幅広い音楽的なバックグラウンドを持つ。
彼のサウンドは、ジャケットの世界そのままのようで、まるで白黒写真に写った昔の日本風景に美しく脚色したような、懐かしい感覚と、プリミティヴな感情の両面が交差し、不思議な感覚に囚われてしまう。
本作は、障害を持つ人たちを 支援する施設でデプルームが彼らとともに作り上げた楽曲を元に作られた曲と、2012年にリリースされた「Copernicus」、2013 年の「The Jester」、2015 年の「Peach」からの楽曲をまとめた、全11曲で構成されている。ある意味、アラバスター・ デプルームを初めて聞くという人には、彼のサウンド面での、創造豊かな世界観に焦点が当たった本作の楽曲構成は、凄く入りやすい作品だと思うのですが、その反面、彼の魅力の一つであるヴォーカルがあまり、フューチャーされていないので、是非この作品をきっかけに、他の作品も、チェックして頂きたいです。
とはいえ、「To Cy & Lee: Instrumentals Vol.1」は、香港出身、ロンドンで活動している、Raimund Wongによる、ジャケットのアートワークとも相まって、本当に手にしたくなる作品。メディテイショナルなジャズ・アルバムといえばそうなんだけど、西洋と東洋との審美がいる混じった音階と、なんとも言えない気怠くフワフワした感じが、見たこともない、懐かしい風景を見たような感覚となって、フワ〜と押し寄せてくる。桜やたんぽぽのが咲き誇る、穏やかな春うららの桃源郷サウンド。