Aoife Blake「The Green Hills」
アイルランド第二の都市「コーク」で活動する、ハープ、シンガー、フィドル奏者である、Aoife Blakeの作品「The Green Hills」ことを知ったのは本当に偶然だった。いつものように、卸からの案内以外の音楽もリサーチしている際に、たどり着いた作品が「The Green Hills」だった。正直コアなアイルランド音楽のファンではないのだけれど、彼女のアイリッシュハープと歌からは、伝統的な音楽を尊重しつつも、土着と洗練さのバランスがとても優しく、心落ち着く響きが伝わってくる。
Aoife Blakeのデビューアルバム「The Green Hills」は、伝統的な曲や歌を、ハープでアレンジしたソロ曲と、Ryan McAuley(5弦バンジョー)、Caolán Keogh(フィドル)、Ciara O’Leary Fitzpatrick(コンサーティーナ)、Ultan Lavery(フィドル)によるアンサンブル曲で構成されている。アイルランドの伝統的な音楽には、リールやジグなどの様々な種類のダンス音楽という、パブでギネスを片手に足踏みしたくなるようなイメージがあったのですが、彼女の奏でる音楽は、そんなイメージとは異なり、アイルランドの音楽に縁のない人でもきっと親しみを覚えるのではないかと思う。アイルランド〜スコットランド音楽やオールドタイムが、彼女のフィルターを通じて奏でられるアイリッシュハープの旋律は、本当に繊細な感性が宿っていて、流れた瞬間、なんとも言えないフェアリーな雰囲気が周囲に漂うのです。
ライナーには、本人による収録曲の解説も記されていて、読んでから改めて聴くのも楽しいです。※少し注釈差し込んでます。
これらのジグの最初のものは、私の自作です。3年ほど前に作ったもので、最近になってようやく仕上げとアレンジをするために戻ってきました。実はこの曲は、私がハープで作曲した最初の曲なのです。2曲目の「Murphy’s Wallet」は、ピアノ奏者のパット・クロウリーが作曲したもので、彼がフィドルとフルートのジョニー・マッカーシーと一緒に録音したアルバム「Fool’s Dream」(1998年)に収録されています。
2. Bobby Casey’s / Callaghan’s
これらのホーンパイプのうち、最初のものは「The Humours of Tullycrine」または「The Road to Góilín」としても知られている。私は最近、この曲のバージョンを見つけましたが、これは広く知られているバージョンや録音されたバージョンとは多少異なっています。Callaghan’sは、私がJohnny McCarthyから習った曲で、Jackie Dalyがアルバム『Music from Sliabh Luachra』(1977年)に収録したものです。
3. The Lambs on the Green Hills
アイルランドやスコットランドで歌われている伝統的な歌です。”I Once Loved a Lass”など、タイトル、メロディ、歌詞が異なる数多くのバージョンがある。The Johnstons(ポール・ブレイディ!)のデビュー作(1968年)、Pauline Scanlon(ポーリーン・スキャンロン)「Hush」(2006年)などが録音しています。
4. How are things in Glocca Morra? (Burton Lane)
1968年に公開された映画「フィニアンの虹」に登場する曲のインストゥルメンタル・バージョンです。アイルランド人のフィニアン・マクローナガンとその娘シャロンが、アイルランドから金の壺を持ってアメリカに逃亡するシーンで歌われています。この曲は、故郷を懐かしみながらも、鳥のさえずりや風の音など、身近な音が自分を慰めてくれるように感じるのです。この解釈をベースに、アンドレ・プレヴィンのピアノ独奏版を、アイリッシュハープ用にアレンジしたものです。
5. Wee Carrie (K. Bruce) / The Hut on Staffin Island (P. Cunningham) The Lass o’ Gowrie
スコットランドの曲を集めたもので、1曲目はキャサリン・ブルースが作曲したストラスペイ(ストラスペイは、リール、ジグなどに分類される、スコティッシュ・カントリーダンスの1つ。速度も緩やかで、ゆったりと落ち着いたリズムで踊るダンス。)。2曲目はピアノアコーディオン奏者のフィル・カニンガムが作曲しました。私たちはリールとして演奏していますが、ホーンパイプ(「リール」と同じ4拍子ですが、Reelに比べてスローなことが多い)としても聴くことができます。最後は、「The Lake of Sligo」など、さまざまな名前で呼ばれているポルカ(現在のチェコ、ポーランド発祥の民族舞曲いわゆる2拍子の曲)で締めくくります。スコットランドの詩人でありソングライターでもあるキャロライナ・ネイン(1766-1845)が、詩「The Lass o’ Gowrie」をこのメロディーに合わせたことから、この曲のタイトルになったと言われています。
6. Dónal Óg / Miss Langford’s
“Dónal Og”は、ショーンノス(伝統的なアイルランドの歌と踊り)の歌で、私はハープのエアーとして演奏しています。私が10歳くらいのときに、最初の音楽教師であるMaude Connollyからティンホイッスルのスローエアーとして初めて習いました。今でも私のお気に入りの一つです。この曲に続く曲は、広く知られているリールです。
7. The Golden Ticket (Eric Merrill)
これはエリック・メリルが書いたものです。数年前にコークで行われたオールドタイム・セッションで学んだもので、オールドタイムの伝統的な楽器であるバンジョーやフィドルと一緒にハープで演奏したら美しいだろうと思いました。オールドタイム・ミュージック(米国南部産のブルーグラスやオールドタイムの源流はアイルランドやスコットランドからの移民と共に運ばれた音楽と、南部に住んでいた黒人奴隷たちの音楽とを織り交ぜて生み出されたもの)は、アパラチア山脈や南部を中心とした北米の伝統的な音楽で、通常はギターやコントラバスが伴奏として使われます。
8. Fead an lolair
この曲は、アイルランドの古いマーチです。名前は「鷹の口笛」という意味です。旋律が非常にシンプルなだけに、様々なアレンジが施されています。
9. The Fairy Dancer (Johnny McCarthy) / The Booley House
フルートとフィドルの奏者、ジョニー・マッカーシーが作曲した「The Fairy Dancer」という曲を収録したスリップジグ(8分の9拍子のジグ)のセットです。続いて、広く知られている伝統的なスリップジグ「The Booley House」が収録されています。
10. Charlie Harris’ / The 8th of January
このセットの最初の曲は、ボックスプレーヤーのチャーリー・ハリスが作曲したリールで、ハープと5弦バニオに適しています。2曲目は私がライアンから教わったオールドタイム・チューンで、ライアンはアリソン・デ・グルート(バークリー音楽院出身の女性クロウハンマー・バンジョー・プレイヤー)とタチアナ・ハーグリーブス(フィドル奏者)によるセルフ・タイトル・アルバム(2019年作)での演奏を参考にしたそうです。
11. An Ciarraíoch Mallaithe
この曲は、アイルランド語の美しい伝統的なバラードです。また、スローエア(楽器演奏)としてもよく演奏されます。タイトルは「呪われたケリーマン」という意味で、この曲は愛と裏切りの物語を描いています。ケリー出身の粗野な男が、女の子を魅了して恋に落ちますが、すぐにお金を持って逃げてしまいます。
ジャケットのアートワークや中のイラストデザインも印象的ですが、手掛けているのが、アイルランド人のお父さんと日本人のお母さんを持つSara Leslieさん。8歳までは日本で生活していたとか。
▼アイルランドの全国紙、アイリッシュ・エグザミナー紙で紹介されています。