Bruno Sanfilippo「The Poet」〜メランコリックなメロディーが詩的に響く、穏やかなサウンドスケープ
90年代から活動している、バルセロナ在住のアルゼンチン人作曲家、ピアニストBruno Sanfilippoのニュー・アルバムがスウェーデンのポスト・クラシカル専門レーベル1631 Recordingsよりリリースされました。
Max RichterやJohann Johannsson、Philip Glass、Arvo Pärtなどの、現代音楽よりの作曲家と、Harold Buddのようなアンビエントを織り込んだような、ミニマルなピアノ・ミュージック作品をリリースしていて、オリジナル作品は、共演作〜映画のサウンドトラックを含めると、すでに20作品以上にも上ります。Bruno Sanfilippoの音楽は、1631 Recordingsを主宰する、 David Wenngren(Library Tapes)のような、演奏者寄りの作品ではない、ゆったりとしたサウンドのムードから、Bruno Sanfilippoの内から溢れ出る感情をしたためるようにメロディーを紡いでゆくスタイル。
「The Poet」では、Bruno Sanfilippoのピアノを中心に、ヴァイオリン、チェロが加わった演奏が中心となっていて、ここ最近の作品「Inside Life」「ClarOscuro」の流れに沿った、繊細で穏やかな旋律と、時折顔を覗かせる壮大なサウンドスケープが絶妙なバランスで同居した作品となっています。
曲によっては、ピアノの弦に、ゴム、金属、木などを挟んだり乗せたりして、音色を打楽器的な響きに変えるプリペアード・ピアノでの演奏もあるのですが、それらを含め、主に三和音を背景に、丁寧に1音1音弾かれるピアノの美しさが、心地よい余韻と共に残ります。他の作品でもそうかもしれませんが、この「The Poet」でも、弦楽器のオーケストレーションとの対比がアルバムの中で上手く構成されていて、重厚なオーケストレーションの後には必ず、シンプルに奏でるピアノから始まる…というような展開で、そのコントラストが、より一層彼の詩的に響く抒情を鮮やかに浮かび上がらせています。