奈良のレーベルMuzan EditionsからCheekboneの最新作!
奈良市で店舗をしていた頃はイベントでもお世話になった、今は京都に住んでいる、Cheekbone から、うれしい作品リリースの連絡があって、もう何度も聴いている「つかの間」という作品。アンビエントと呼ぶにはあまりにも淡くデリケートなサウンドが宙に浮かぶ、メディテイティヴなサウンド。
Cheekboneについては、2008年に、曽我部恵一主宰のROSE RECORDSからオフィシャルでのリリース作「ちぐはぐ」を発表したことくらいしかネットの情報には広まっていないけれど、それ以前も、2007年に、Hidden Shoalから、「Yesterday」をリリースしており、イタリアのバンドPort-Royalのリミックスなど、n5mdレーベル界隈の音楽性とも相性が良い。また、同じHidden Shoalから、ウェールズのアンビエント・アーティストAntonymesが「Yesterday」収録曲”Reef”をカヴァーしていて、これもぜひ聴いて欲しい。
さて、「ちぐはぐ」からほぼ10年ぶりとなった「つかの間」は、Muzan Editionsから。奈良県に拠点に活動するカセット/デジタルダウンロードのレーベルからで、すでに8タイトルをリリースしています。特に、cheekborneが推薦してくれた、Lee Nobleは確かな才能をぎゅっと押し込め化学反応を楽しむような、変に洗練されていないサウンドスケープが良い。Cheekbone、Lee Noble含め、Muzan Editionsのリリース作品については、言い方が正しいかはわからないけど、カセットというフォーマットもあって、多くの人には伝わらないかもしれないけど、このサイトを見てくれている、多様さに寛大で感度の鋭い耳の人には、とても刺激的で確実に受け入れられて行くレーベルになると思うので、Cheekbone共々、ぜひチェックを。
近年ラップトップに依存する制作から脱却する音楽家が増えていると感じる中で、Cheekbone もアナログシンセ、フィールド録音、オルゴール音などのサウンドコラージュなどで創り出す、人が奏でる音楽にシフトしている。「つかの間」は、ここ数年間に作り貯めた音源が中心となっていますが、彼本来のメランコリックなポップ性が、蜃気楼のように浮き上がり、作品の中に美しい流れを生み出している。
作品全体、楽曲それぞれの尺も長すぎず、短すぎず絶妙で、このことについて本人も、聴きやすさを念頭に気を配っていた…とのことで、この作品の柔らかな世界観をなんのストレスもなく堪能することができる。ドリーミーで淡い浮遊感に包まれながらも、心地よい微妙な機微や、ノイ、クラスター、タンジェリンドリームの蜃気楼も見える、想像以上にまったり落ち着く、いつまでも浸っていたくなる作品です。
あと、補足として、この作品、デジタルで聴くのとカセットとではどことなく作品の印象が違って聴こえるんですよね。カセットはCDやデジタルとは違って作り手の意図に沿った流れで聴くことになるので、それは、聞き手と作り手の関係性が、とてもイーブンに近い状態で作品に接することができることでもあるんですよね。そしてカセットは再生機の良し悪し問わず、デジタルで聴くよりも音が不完全な、あたたかい魅力を感じる不思議さがある。もしラジカセなんかを持っているひとは、この作品、絶対カセットで聴くのがオススメですよ。
01. Erioclaucin
02. Curcuma Longa
03. Hidden Dancefloor
04. Rubia
05. Zinn
06. Nagisa
07. Float On
08. Slower Eastwind