昨年、東京のレーベルflauを通じて日本に紹介された、台湾の室内楽アンサンブルCicada。日本デビュー作となった、海をテーマとした作品「Ocean」は、デリケートな美しさと、豊かな情緒に溢れながらも、環境問題にまで踏み込む、憂いにも似た感傷がほのかに織り込まれた素敵な作品でした。Cicadaや、「Ocean」については、別ページでも紹介しておりますので、ぜひこちらのページをご参照ください。
[browser-shot url=”https://www.pastelrecords.com/cicada-ocean/” width=”600″ height=”450″]
「Ocean」リリース時にすでにアナウンスされていた、今回紹介の「Farewell」。心待ちにしていた方も少なくないかと思われます。「Ocean」にしても、「Farewell」にしても、過去の楽曲を独自にまとめ、これからのCicadaのワールドワイドな活動を、後押しする作品でもあるのですが、ただ単に、Cicadaの事を知らないリスナー向けに、ベスト盤として編集されたものではなく、純粋に、この2作品は、Cicadaの現在を映し出す最新作として捉えることもできる作品、とも言えるものです。
収録曲は、長らく廃盤となっている彼らの代表作「Pieces」から、”Drowning in the Fog of yours”、”Happily Ever After?”、”Encrypted Desire”、”Pieces”、”No Words”、”Breakaway”と最多の6曲に、Cicada最初のリリースとなった「The Sea/Under the Water」より”Farewell (in a pretentious way)”と”…till the day we meet”の2曲、セカンド作「Let’s Go」からは、”Told You!”と”Boom Boom”、”What do I do?”、”Here We Are!”の4曲。それに”Lake’s End”、”Meteoric Night”という名曲2曲のシングル曲を加えた全14曲の構成です。
先ほど”Cicadaの現在を映し出す最新作”と書きましたが、「Farewell」に収められている楽曲はすべて、新たなメンバー編成による演奏を収録したものになっています。実際、過去の楽曲と「Farewell」を、ひととおり聴き比べてみたのですが、本当にCicadaの繊細で、ピアノのアイデアに富んだリズムの取り方や、ストリングス、アコーステックギターによる多彩なアンサンブルが、洗練された感覚で感じ取れるものとなっており、これを聴いてしまうと、これまでの録音は、演奏に初々しさすら感じてしまうし、当然音質もその差がはっきりと感じることができます。
この作品にはテーマがあって、「人と人との関係性、そのサイクルをテーマとし、別離、不確かな未来との対峙、私たちの中にある十代の少女の心を明らかにする…」(flau HPより)としている。「Farewell」を聴いていると、Cicadaは、清潔な音楽性と内面の豊かさに支えられているのだと改めて気付かされます。静かに幻想と感情の拡がりを描き、何気ない日常を透視するかのように清冽に内省的な叙情を奏る…。彼らのみずみずしい感性が、よりしっかりとした足取りで踏みしめられた作品でもあるのです。
■Track List
01 Farewell (in a pretentious way)
02 …till the day we meet
03 Drowning in the Fog of yours
04 Happily Ever After?
05 Pieces
06 Encrypted Desire
07 No Words
08 Breakaway
09 Lake’s End
10 Meteoric Night
11 Told You!
12 Boom Boom
13 What do I do?
14 Here We Are!