1971年にミュンヘンで設立されたENJA(European New Jazz)レコードの期間限定の復刻シリーズから、ダスコ・ゴイコヴィッチの「スウィンギン・マケドニア」(66年)、「アフター・アワーズ」(71年)を仕入れてみました。
ダスコ・ゴイコヴィッチは、旧ユーゴスラヴィア、ボスニア・ヘルツェゴビナ出身のトランペッターで、旧ユーゴスラビアの民謡や、ジプシー音楽に触発された、情熱的でエネルギッシュ、哀愁に満ちたメロディアスで独特のリズムの演奏が個性的ですが、作曲家としてもシンプルに素晴らしいと感じさせる作品揃いなのです。
「スウィンギン・マケドニア」は、ダスコ・ゴイコヴィッチが、バークリー音楽院を卒業後、ヨーロッパへ戻った後、最初に吹き込んだ作品(1966年作ドイツ録音)で、マル・ウォルドロンやネイサン・デイヴィスらが参加した、前述の要素が凝縮された代表作の一つ。あまり哀愁べっとりも好きじゃないんですが、これに関していえば、東欧のエキゾチックさのようなホーンの響き、フレーズのカッコよさがたまらなく良い。冒頭の”マケドニア”からその魅力は全開なんですが、ラテンの流れをくんだグルーヴィーなリズムが、ダスコの力強いトランペットと共に、ぐいぐい聴く方も引っ張られてゆく。全体的にも名曲が多く、熱〜い演奏もあれば、抒情的でうっとりするものまで、聴いていて本当に飽きさせない。とにかく、ダスコ・ゴイコヴィッチのトランペット、ネイサン・デイヴィスのテナーが素晴らしすぎ!聴いた瞬間スゲ〜カッコいー!と、まあ平凡な言葉しか出てこないくらい。ラストの「Balcan Blue」は、気分も上がるフロアではお馴染みの名曲ですね。
そして「アフター・アワーズ」は、1971年にバルセロナでテテ・モントリュー・トリオを従えワン・ホーンで吹き込んだ、これまた素晴らしい名盤。なんと言っても、テテ・モントリューのハイテンションなピアノがこの作品の価値を引き上げているのは間違いございません。スライド・ハンプトンの”LAST MINUTE BLUES”なんて、途中、これ誰のリーダー作?と思うくらい、テテ・モントリューのピアノが目立つのですが、スイング感、完璧なテクニックに圧倒されるんだからしょうがない。とはいえ、やっぱり、ダスコ・ゴイコヴィッチのハードバップスタイル全開の熱量溢れるトランペットは最高です。また、他の作品にも収録されている、名曲”OLD FISHERMAN’S DAUGHTER”でのイントロからワルツに転調してムーディーにトランペットが始まるところなんかは、もうクラっときちゃいますね。ホントいい曲。ブルージーで哀愁を帯びたナンバーにしても、クドさみたいなものはなく、サド・ジョーンズの”A Child Is Born”や、コール・ポーターの”I Love You”など、聞き馴染みの曲もあって親しみやすく、演奏も極上、情熱的で、ハードバップな作品かなと思います。
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