米国人女性シンガーソングライターElyse Weinbergの、幻とされていた69年録音のセカンド作「Grease Paint Smile」が、ローカルな名作を発掘するレーベルThe Numero Groupより今年リリースされたのですが、当STOREでも取り扱いを始めたのでご紹介を。
Elyse Weinbergは、フォーク/ロック愛好家の中でも69年作「Elyse」がよく知られているところなんですが、それはあくまで熱心にサイケ~フォークの作品を追いかけている人の話。ほとんどの方は彼女の存在について、詳しい人はそういないのではないでしょうか?とはいえ、ヴァシュティー・バニヤンや、ジュディー・シル、カレン・ダルトン、リンダ・パーハクスらが日本の世代を超えたファンに知られ、愛聴されている現状、Elyse Weinbergだって絶対知っておいて損はしないハズ。
この「Grease Paint Smile 」は、リリース前にレーベルが倒産しお蔵入りとなったまま、ずーっと再リリースの機会なくやがて幻となった作品です。この作品の話題といいいますと、プロデューサーであるDavid Briggsの影響か、ニール・ヤングがギターで1曲参加している点なんですが(David Briggsは、ニールヤングの作品プロデュースで有名)、その他にも、70年代のウェストコースト・ロックを裏で支えたJ.D. Souther、リンダ・ロンシュタットと共にストーン・ポニーズのメンバーでのちにリンダ・ロンシュタットのバック・バンドのメンバーとしてリンダの全盛期を支えた、Kenny Edwards、 ブルース・スプリングスティーンをバックアップする、E・ストリートバンドのリード・ギタリストとして知られ、ニールヤングの名作「アフターザゴールドラッシュ」にも参加している、録音当時18歳の、Nils Lofgrenという面々のクレジットも興味をそそります。もし英語の堪能な方でしたら、Jerry David DeCiccaによるライナーもご覧ください。ニールヤングのレコーディング時の様子など、本人の談話も含め、読むことができますよ。
まず耳を奪われるのが、冒頭の”What You Call It” Elyse Weinbergのアコーステックギターでの弾き方りで、どこかトム・ウェイツ的に、 しゃがれ気味に歌っているのですが、人それぞれ抱えているであろう孤独感を癒してくれるような優しさが溢れていて思わずグッときてしまう。
やがて曲が終わり次の曲からは、参加メンバーによるファジーなバンドサウンドが、続くのですが、ラフでブルージながらもフォーキーな演奏と、Elyse Weinbergとのハスキー気味に歌うソウルミュージックを意識した歌唱がすごく合っているんですが、不思議と泥臭いイメージは湧いてこないんですよね。 むしろ清々しさと純粋に音楽を演奏する喜びが伝わって来ます。