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Eyolf Dale『Return To Mind』(Edition Records)

叙情性と探検的な即興スタイルが結びついた、詩的かつ表現豊かなアンサンブル

ノルウェーは、オスロを拠点とするピアニストであり、作曲家であるEyolf Dale(エイヨルフ・ダーレ)

彼は、2016年発表の前作『Wolf Valley』がSpellemann Prize(ノルウェーのグラミー賞)にノミネートされるなど、その評価は近年著しく高まっていますが、個人的には、断然2018年にリリースされた、彼の4枚目となる本作「Return To Mind」を激推しいたします。

今、勢いのあるジャズレーベルとして、にわかに注目を集めるEdition Recordsのラインナップにあって、個人的には、一番グッときた作品でもあるのですが、クラシック音楽、即興演奏、ジャズ、現代音楽を好み、彼の叙情性と探検的な即興スタイルが見事に結びついた作品が『Return To Mind』とも言えるでしょう。

ピアノトリオ/管3本/ヴァイオリン/ヴィブラフォンという特徴的な編成で繰り広げられるクラシカルな旋律を重ね合わせた、ダーレの見事な曲想とアレンジ。ピアノ中心にホーン、バイブ、キーの間で牧歌的なメロディーを織り交ぜながら、音楽は、パワフルで感情的な変化を見せてゆきます。この作品に収録されている楽曲の多くは、ツアーで旅する合間に作られたもので、移りゆく旅路をインスピレーションに作られています。高度なテクニックに裏打ちされた、インプロヴィゼーションの側面を見せつつ、イマジネーション豊かなアンサンブルと、美しい楽曲によって、それらはアンサンブルの背景に、より一層の深みを与えます。

ECM作品に通じるような、風景の移り変わりを思い起こさせる情緒や、グループの一体感で変幻自在に変化するジャズのワクワクするようなスリリングな楽しさ、ペンギンカフェオーケストラのような、現代音楽の方法論で知的なユーモラスさを表してみたり、ピアノを中心としたしっとりと物思いに耽りたくなる静謐な演奏だったりが、まるで一つのストーリーのように、何の違和感なく作品の中で調和されている。こんなにワクワクうっとりするジャズ作品は、そうなかなかないですよ。

01. Midsomer Gardens
02. Soaring
03. The Mayor
04. Return to Mind
05. Naurak
06. Woody
07. Rhône
08. Taplow
09. I Can’t Deny
10. Tranquil Dance

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