生き生きとした情景が見えてくるピアノと生き物とが紡ぐ楽園ピアノアンビエント
ブラジル・サンパウロ出身のピアニストで、ブラジル国内にて、アントニオ・カルロス・ジョビンの研究家としても評価されている、Fabio Caramuruによるソロ・ピアノとフィールド・レコーディングによる美しい作品「Eco Música」が日本(flauより)でも紹介されることになりました。
サビアやスズドリといった野鳥のさえずりやカエル、コオロギなど様々な虫達の鳴き声の録音とともに、奏でられる、インプロヴィゼーションによるピアノの調べ。作品の成り立ち自体はとてもユニークなものなのですが、フィールド・レコーディング(自然界の生き物達)とピアノ、どちらも一つの作品の中で共存しあった、まるで対話するかのような両者の調べに、心惹かれて行きます。
Fabio Caramuruは、フランスで活躍したブラジル出身の女流クラッシック・ピアニストのMagda Tagliaferroの最後の生徒ということで、クラシックをベースにしたスタイルではあるものの、内面的な表現をさらりと表現出来る即興的な部分と、愛情豊かで濃やかな親しみやすさ、古典的なバランス感覚を持ち併せているのですが、2007年にリリースされている、トム・ジョビン・カバー独奏アルバム「PIANO -TOM JOBIM POR FOBIO CARAMURU」では、シンプルにピアノの演奏のみ、アレンジも原曲を忠実に演奏したもので、Fabio Caramuruの個性はさりげなく織り込んでいる…にとどまっていたのですが、この「eco musica – conversas de um piano com a fauna brasileira」では、彼本来の個性が存分に放たれた、邪気のない流麗なピアノと、詩的な味わいを堪能できる作品と言えるでしょう。
そしてこの作品のもう一つの主役である、ブラジルの生き物のフィールドレコーディングは、世界最大のサウンドライブラリーの一つとして知られる、カンピーナス州立大学内に設立されたFNJV(A Fonoteca Neotropical Jacques Vielliard)より、収録されている様々な生き物たちの鳴き声を収録しています(FNJVのHPでもいろいろとサンプル音源が聞くことができますよ)。フィールドレコーディングといえども、まるで、動物たちの住む自然の中にピアノを置いてレコーディングしているかのような臨場感あるセッション。Fabio Caramuruは、この作品のレコーディングの前、1ヶ月間をブラジルの生態系についてのリサーチを行いながら、楽曲構築の時間にあています。
「eco musica」は、自然の素晴らしさを教えてくれた亡き父親への追悼に加え、自然環境への関心を喚起させる意味合いもあるかもしれません。でも別の視点では、1曲目に流れてくる、蝉の鳴き声の持つ季節感と、過ぎ去りしひとときを慈しむような柔らかく繊細に紡がれるピアノの旋律からは、時間の長さを忘れさせる心地さに浸ることができますし、また、コンテンポラリーなジャズスタイルも織り交ぜ、鳥の鳴き声を真似ねるような演奏は、あたかも鳥と、Fabio Caramuruが会話しているかのような、生き生きとしたメロディーと共に、自分たちの記憶の中にある様々な情景が見えてくるようです。
Tracklist
01. cigarra
02. bem-te-vi
03. tico-tico
04. sapo-cururu
05. quero-quero
06. grilo
07. uirapuru
08. tangara
09. araponga
10. anu-branco
11. canario-da-terra
12. tuim
13. sabia
14. arara-azul