一度聴いただけでは本当の魅力が味わえないくらい、人の想像力をそそる音響空間が広がる
アルゼンチンの音響詩人、Federico Durandが2度目となりジャパンツアーを行なったのが今年3月のこと。個人的にも念願かなって、神戸〜奈良の関西公演に関わることが出来きました。また、この関西公演には、フェデリコさんをこよなく愛し、hofliとも親交の深い、猫ノ手舎さんと一緒に開催出来たことも、この関西公演がより一層の思い出深いものとなったのですが、それに輪を掛けて嬉しかったのが、ジャパンツアー後に発表するされた、本作「Niebla y jardines tomados por las plantas」であり、フェデリコさん、hofli、そして、アートワークを担当したfuuyanmさんとの交流が密度の濃い作品に繋がっていたことです。
「Niebla y jardines tomados por las plantas」の原型は、今年行われたフェデリコさんのジャパンツアーの関西公演にあわせてフェデリコ、hofli両氏がお互いのフィールドレコーディングを音源を交換しあい産み出され音源を、fuuyanmさんが聴いて感じたまま、描いた大きな絵をジャケットサイズにカットしジャケットにした自主制作作品「点対称の園丁へ 〜 El jardín de la armonía」です。この作品については、公演喫茶でも取り上げておりますのでそちらを参照ください。
⇒https://www.pastelrecords.com/koencafe/?p=3094
神戸でのライヴも映像でご覧頂けます。
そして、ジャパンツアー後に、再度レコーディングによって作られた3曲を追加、マスタリングを経てspekkからリリースされたのが、『Niebla y jardines tomados por las plantas』になります。
冒頭の新録”Into a dream garden”の、静寂な闇の中で響く虫の音、まるで幻想的な空間を生みだす霧のように漂よう音響から、まだ人が動く前の穏かな早朝のひと時をイメージさせる、次曲の”Lavanda”の流れがとてもナルホド!と納得してしまう。彼らのサウンドは、フィールドレコーディングを主としているのですが、それはただ単に日常の一部分を安直に切りはりしているというわけではない。不思議と同じ感性の共通項を持つフェデリコ、hofli、それぞれが感じる日常の中を行き来することで、それぞれのソロ作にはない土着的な香り、夢の中のようなふわふわとした情緒、異なる場所で生まれ育った同士でありながらも、同じ共鳴しあう視点が存在し、交わり合う幻想…。そういったものがこの作品の中で、見事に凝縮されているのです。
hofliのサウンドで感じられる、サウンドスケープの奥行というか立体感というべきか、より一層の情景を喚起させ、ここではないどこかへ旅するようでもある。また、フェデリコ独特の電子音というよりは、自然の言霊とも言いたくなるようなサウンドから、人が息づく描写まで、それらを並列で聴かせることで、一度聴いただけでは本当の魅力が味わえないくらい、人の想像力をそそる音響空間が広がって行く。この作品では、意図的に楽器などを用いたセンチメンタルなメロディーは無いし、そもそも全くそういったものが入りこむ余地はない。音が生み出される背景をも想像してしまうことこそ、この作品を聴くことの新たな楽しみの一つでありこの作品の価値なんじゃないかと個人的には思っています。
<収録曲>
01. Into a dream garden
02. Lavanda
03. Last night I was a cat in your garden
04. Salvia
05. And I looked up at the constellation
06. Menta
07. You have dreamed of me playing in your garden durin g siesta
08. Jazmín del país
09. In the herb fragrance
10. Los siete cabritos