旧東ドイツ出身のピアニスト、作曲家、編曲家、Henning Schmiedtと、東京出身のアーティスト Yasuhiko Fukuzonoによるソロ・プロジェクトausが製作したカフェのサウンドトラック「Underneath」が一般向けにも販売されました。
もともとは、東京・目黒のカフェtorseの移転・6周年記念のために製作されたもので、Henning Schmiedtの2時間の即興演奏を、ausが2日間に渡ってエディットして仕上げたもの。聴いてすぐにわかる、人柄までも表れた、優しさあるHenning Schmiedtのピアノ。そこに、ヨーロッパで録音したダルシトーンや大小様々なベル、プロセッシングを施した、Danny Norburyのチェロや、Field RotationことChristoph Bergによる、バイオリンのサンプル、各地で録音されたフィールドレコーディングを背景に潜ませたausによる、作品の構成やミックスが、Henning Schmiedtのピアノのコントラストを詩情豊かに引き出し、静寂を意識させる美しいサウンドスケープを聴かせてくれる。
カフェでの楽しみ方は人それぞれ。コーヒーを飲みたい人、誰かとの待ち合わせで時間を潰す人、ゆっくり本を読む人、仕事の打ち合わせなど、少しの時間をゆっくりと、自由に過ごしているはず。これまでになく静謐な演奏を心がけたというHenning Schmiedtのピアノ。いつものソロ作品以上に、ゆったりとした演奏で奏でられた、そのメロディーは、淡く光る空気を映し出すようなausのサウンドトリートメントとともに、様々な感情に寄り添い、カフェでの穏やかな活気と、心地よさのようなものを含め、聴く者を暖かく包み込んでゆく。
遠くでさえずる鳥の鳴き声、街角の雑踏の中から聞こえてくるヴァイオリンの演奏、人の話し声…それらフィールドレコーディングを始め、作品に奥行きと適度なゆらぎを持つリズムを与え、この作品をストーリー性ある流れにまとめあげた、ausによる手腕もさることながら、ソロ演奏家として確立したスタイルのピアノ演奏を自由に委ねたHenning Schmiedtのausに対する信頼関係も垣間見える、両者の新たな魅力が引き出された作品とも言えるでしょう。
ジャケットには実際にtorseにあるカフェの椅子と花々のイラストが描かれ、グラシン紙を使ったカバーにはつや消しのゴールドとシャンパンシルバーで箔押しした2バージョンが用意されていてまるで2人からの贈り物のような素敵なジャケットです。