惑星のかぞえかた「separate」~内省の世界を映し出す、2人が紡ぐ個の連なり
text : Kenji Terada (PASTEL RECORDS)
この公園喫茶でも、ディスクレビュー、そしてインタビューとお世話になっております、惑星のかぞえかた。鳥獣虫魚さんからファーストアルバム『朝を待つ』を出したのもつかの間、すぐに今回の作品『separate』のインフォが届いて、あれ、もうセカンド?と思ったんですが、内容はインスト曲を含む、5曲入ミニアルバムでした。ただ、間髪入れずリリースしているアーティストのほとんどは、創作活動が充実していることが多い。もちろん「惑星のかぞえかた」も例外ではなく、『朝を待つ』を聴いて気に入った方は、ぜひこのミニアルバム『separate』も手にしてほしいのです。
「惑星のかぞえかた」は、石坂智子(g、vo)、宮里啓吾(g)の2人を中心に、都内で活動をしていたわけですが、現在、レーベルインフォによると、ギターの宮里啓吾さんが、関西に移住ということで、この点、石坂さんにインタビューの際にお尋ねしたのですが、実は、岐阜とおっしゃってたので、それだと関西ではないんですよね。この辺の部分は、インタビューカットしたんですが、よくわからないままうやむやにしてしまってますね~。個人的にはどっちでもいいんですが。ともかく、『separate』は、タイトルも示しているように、別々の離れた場所で作りあげた楽曲を一つのアルバムとして仕上げられたものとなっています。
『朝を待つ』で感じたのが、「惑星のかぞえかた」は、フォークミュージックをベースとしながらも、もっとジャンルを横断できる柔軟性と真摯さがあり、自分たちの佇まいを、きっちり主張できるグループなんだなぁ~ということ。そして、インストナンバーと歌との親和性が、今作で特にはっきりと示されたものになっているような気がする。出だしは、アブストラクトなヴォーカルハーモニーや、ギターなどで生み出される、淡く美しいまどろみながらディープなアンビエントサウンドが広がる。一瞬、誰の作品を聴いているんだろう?って考えてしまったのですが、そのまま2曲目の”nei no su”に繋がり、さらりとつま弾かれるアコーステックギターのストロークで、周りは一気に静寂に包まれ、やがて、うたが始まる。
石坂さんの歌声は本当に不思議な響きを持っている人だ。特別個性的なキャラクターの声質やソウルフルな感情をことさらひけらかすうたい方でもない。…ではないのですが彼女の歌には可憐でいて、しっとりとメロディーに寄り添うように情感が込められ、それがいつも聴く者の、心の琴線に触れる…。そしてこの作品では、このグループのもう一つの魅力を持っている、宮里さんのギターによるインストナンバーが2曲含まれています。エフェクトを使いながらも、弾くギターからは、やわらかな音色がゆらゆらと、揺らめきながら朴訥と、そして内なる詩情をギターに伝わせながら、幽玄なサウンドスケープを生み出してゆく。
あえてこの作品では、2人作曲された別々のトラックを並べてはいるものの、各人のアイデアの捌け口となっているわけではない。「惑星のかぞえかた」というのは、繊細な音楽性の凝集の連なりを糧に、豊かなオリジナリティーを生み出す柔軟性を持っているんだ、ということが改めてわかるような作品にもなっている気がする。それはこの作品を聴き終えて、これらインストナンバーやヴォーカルトラックがなんら違和感なく共存していることからもそう思うわけです。彼らは、ことさらヴォーカルを前面に立てることに意識的になっていないし、自分たちの曲作りの価値観というものが、別々の場所での活動だったとしても、きっちりと共有されている。この作品を出すことで、彼らは静かでおだやかな、ゆるぎない内省の世界を紡ぎつつフォークミュージックというカテゴリーにとどまらない柔軟さを持って音楽に向かうことができるのではないでしょうか?そんな今後のますますの飛躍を予感させるミニ・アルバムです。guse arsの手がけたジャケパッケージも手にする価値あり!ですよ。
■ アーティスト:惑星のかぞえかた
■ タイトル:Separate
■ フォーマット:CD
■ レーベル:RONDADE
■ 品番:ROND-22
■ ジャンル:フォーク/アンビエント
■ リリース年:2014年
<収録曲>
01. separation
02. 寧の巣
03. summer
04. 部屋より
05. one
惑星のかぞえかた「separate」 はPASTEL RECORDSでご購入頂けます!
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