A Model Kit 「Invention of Love」(Hidden Vibes)~叙情のやわらかさが親密に、心にせまる

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text : Kenji Terada (PASTEL RECORDS)

ここ最近、出あったレーベルの中で、ウクライナの首都キエフから発信している、Hidden Vibesというレーベルがあります。皆さんもご存じのとおりウクライナ情勢が日々ニュースで伝えられていますが、そんな混乱した国内にあっても良質な音楽を発信しようとしている人はいるんだな~と。Hidden Vibesは、おそらく2011年ころから活動をしているレーベルで、エクスペリメンタルなアンビエント~ドローン作品の他、レーベルを主宰しているOleksiy Sakevychのプロジェクト、Endless Melancholyのような、ピアノベースの美しく聴きやすい、ポストクラシカルなアーティストもリリースしています。

そして今回ご紹介は、Endless Melancholyに続く、レーベルの看板アーティストになりそうな、A Model Kitの作品『Invention of Love』。これがなかなか今後も含め活躍が期待できる内容なのです。A Model Kitは、ロシアの音楽家Maxim Popovのソロプロジェクト。これまでに、Hidden Vibesより、『Roads For』(2012年)そして、『Lights​​/​​bay』(2014年)とEPをリリースしていますが、『Invention of Love』は最初のアルバム作となります。

『Roads For』も素敵な作品で、ピアノ、そしてストリングス(多分生楽器の演奏ではないと思うけど)を用い Olafur Arnalds、goldmundや、同レーベルのEndless Melancholyに通じる、静謐で、静けさと儚さ、そしてそれに交わる温かな余韻を伴った旋律を聴かせてくれてました。『Invention of Love』ではそこに、打ちこみや、ドラムなどが大々的に入り、IDM、ポストロックを通過した要素がよりスケールの大きなサウンドに寄与している。正直なところ、『Invention of Love』からは、何か新しいサウンドを聴かせてくれる…という類の新鮮さはありません。ただ、クラシカル~アンビエントな音楽にエレクトロニックなビートが入った作品の多くは、ポップな聴きやすさが出る半面、どこか単調で、”よくある”作品に落ちてしまうのも事実なんですが、A Model Kitに関してはそんな印象は聴いていて不思議と感じることなくただただその美しさに魅了されてしまった。

きっと何々のような…的な表現を使うと、n5mdとかからリリースしている作品や、Kettel、そして、彼が影響を受けている、Sigur Ros、Radiohead、Mum、そして前述の、Olafur Arnalds、goldmundなどのような…なんて言い方もできるんですが、やはりそれだけの簡単な紹介だけではA Model Kitの魅力を語るには十分ではない。

クラシックとエレクトロニカをメランコリックでドリーミーなサウンドプロダクションで、きらびやかに聴くものを包みこみ、そこにクラシカル特有のメランコリックさと繊細さが交わるアコーステックピアノを落とし込む。1曲目”Rising”の、シンフォニックなオーケストレーションと、躍動するエレクトロニックなビート~優雅に奏でる、ピアノと、繊細さを引き立てる、ストリングス、そしてドラムも加わりながら徐々にドリーミーで高揚感ある世界を生み出す2曲目の”Elska”で、既にA Model Kitの魅力にはまってしまう。

高雅な気品を漂わせながら、叙情の柔らかさ、メランコリアとぬくもりが同居するメロディーはとても親密で、クラシカルにあるシリアスさとポップな聴き心地のよさとのバランスが実に絶妙。A Model Kitのフィルターによって、シンセやデジタルサウンドのエッセンスをセンス良く組み合わせたオーガニックなサウンドに、甘美にうたうメロディーとしなやかなフレージングに彩られた『Invention of Love』を聴けば、きっとあなたのお気に入りの1枚にしておきたくなる魅力を放ってくれることでしょう。

 

■ アーティスト:A Model Kit
■ タイトル:Invention of Love
■ フォーマット:CD-R/Digital
■ レーベル:Hidden Vibes
■ 品番:HV027
■ ジャンル:ポストクラシカル/エレクトロニカ/IDM/アンビエント
■ リリース年:2014年

 

2014年05月11日 | Posted in 音楽レビュー | タグ: , , Comments Closed 

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