David Newlyn「Disintegrating Suburban Dream」~幽玄なアンビエントドローンとともに奏でられる腐食するメロディー
text : Kenji Terada (PASTEL RECORDS)
近年、好リリースが続いている、UKのエクスペリメンタル・レーベルHibernateのカタログに、イングランド北東部ダラムのアーティストDavid Newlynの作品「Disintegrating Suburban Dream」が加わりました。David Newlynはこれまで、Symbolic Interaction、Cotton Goods、Time Released Sound、tokyo droning他、CD-R、カセット含め、数多く作品をリリースしています。彼のすべての作品を聴いたわけではないのですが、シンフォニックに広がるアンビエントサウンドに、切なく響くピアノがとても印象的なのですが、若干、サウンド面のアレンジなどが大味な感もあって、良いんだけどちょっと惜しいな~っていうのが私のこれまでの評価でした。
ただ今作、とても良い!ピアノ~キーボード、ギター、フレットレスベースそしてエレクトロニクスを用いながら、カメラや携帯電話で彼のホームタウンである、ダラムやニューカッスルで録音したという、フィールドレコーディングが背後で、幽玄なサウンドスケープの土台となっていて、この作品で鳴らされる音の密度の濃さが、聴く者に様々な情景を運んできてくれる。
作品名の「Disintegrating Suburban Dream」や、Isnaj Duiこと、Katie Englishのカバー写真の雰囲気から、この作品は廃墟がテーマになっていることが想像できる(実際彼は廃墟巡りが好きだとか…)。David Newlynの奏でるメロディーの、ピアノであったり、ギターだったりは、これまでになく密やかで、実に奥ゆかしく、霧の層のように織重ねられた幽玄なアンビエントドローンとともにクラシカルに奏でられる。
人間の手によって建てられ、栄枯衰勢を経て、やがて放棄され自然に包み込まれ、朽ち果ててゆく…。廃墟には、その場所、建物には、人間がいた空気の痕跡がありながらも2度と戻ってくることのない虚無感と哀愁が漂う。さびしく、ちょっと気味悪いところもあるし、個人的には積極的に訪れたい衝動には駆られないんですが、不思議とDavid Newlynの奏でるサウンドは、腐食するメロディーのような、廃墟の持つ朽ち果ててゆく美しさを見事に描き出している。それは恐怖心を煽りたてるものではなく、ぼんやり聴いていると、ただただ安らかな気持ちにさせてくれるものなのです。
■ アーティスト:David Newlyn
■ タイトル:Disintegrating Suburban Dream
■ フォーマット:CD<
■ レーベル:hibernate
■ 品番:HB53
■ ジャンル:アンビエント/ポストクラシカル/エクスペリメンタル
■ リリース年:2014年
<収録曲>
01. Longer Days
02. No Rest In The Silence
03. Nowhere To Go
04. (Possibly) Subsequent Disorientation
05. Moon
06. This New Community
07. Rule Of Thirds
08. Channels
09. Feeling No Remorse Must Be A Blessing
10. Walking In The Dark
11. Northern
12. Winterheight
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