Gaze is Ghost「Plume 」 ~漆黒の静寂を潤す知的で美しいメロディー
text : Kenji Terada (PASTEL RECORDS)
北アイルランド出身のシンガーソングライター、Laura McGarrigleのプロジェクト、Gaze is Ghostが気になってます。2013年に、7曲入ファーストEP「Plume」がリリースされるとにわかに話題と…はなってませんが、Gaze is Ghostのフェイスブックページでは、既に、何曲かレコーディングしているみたいなので、近い将来、フルアルバムがリリースされるのは間違いないでしょう。早く聴いてみたいものですが、まずは、「Plume 」をじっくり聴いてみて頂きたいです。
時に儚くガラスのような繊細さと、それでいながら芯の強さも覗かせる確かな存在感をもつLaura McGarrigleの歌唱、そしてインディーズのデビュー作とは思えないレベルの、深慮で時にしなやかに躍動するバックの演奏/アレンジが彼女の創造性を支えている。
妖艶さを醸し出すフォトイメージから、ちょっとおっかないお姉さんが歌ってるのかな?なんて思ったりもしましたが、実際のところ、そんな先入観は聴いてしまうと、ほのかな感動へと変わります。
作品はひっそりと歌い始める”Coco Lico”から。サクソフォンや、ピアノ/エレピ、そしてプロセッシングをと、彼女のハーモニーを取り込み、ジャジーで自由度のある、静寂さをキープしながらも幻想的な世界を生み出してゆく。
次の”Invisible Cities”も前曲からの流れを汲んだ内容で、徐々に弦/管楽器が入り、クラシカルなムードとともに、 Laura McGarrigleの繊細な歌が堪能できる。他の曲に関しても、歌と、演奏との距離感がとても良い。多彩なアレンジや時に荒々しい展開を聴かせる場面もありながら、聴いてて特に破綻しガシャーンととっ散らかった実験性を誇示する白けたものではなく、絶妙に表現と実験性の間をキープし、美しいメロディーを聴かせてくれるところに彼女の非凡さを感じる。
作品を聴いていると、スティーナ・ノルデンスタムや、ビョーク、そしてケイトブッシュなど思い浮かべるひとも多いかもしれない。まだこれからだし、1つの作品だけでGaze is Ghostの将来をどうこういう資格は自分にはないんですが、こんな豊かな才能を聴かせてくれる作品を作っときながら、この次の作品が駄作だったら…ちょっと悲しいな~。
関連記事
Tambour「Chapitres」〜ピアノとストリングスが美しく調和し、ミニマルに舞いながら、甘く切ないストーリーを紡いでゆく…。
Federico Durand & hofli「点対称の園丁へ 〜 El jardín de la armonía」
Dylan Golden Aycock「Church of Level Track」〜Takoma Schoolのルーツをレゾナンスさせた、イマジネーション豊かな調べ
Ed Carlsen「The Journey Tapes(Deluxe Edition)」〜幻想的な音の創造にパラフレーズされたおとぎ話の風景
masahiko mikami + masayoshi fujita「conjecture」〜美しく心地よいひとときを運んできてくれる、音と音とのダイアローグ