AARON MARTIN / CHRISTOPH BERG「DAY HAS ENDED」〜日が暮れるまでのひとときをサウンドにしたためたメランコリーで親密な作品

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text : Kenji Terada (PASTEL RECORDS)

この公園喫茶でも、The Green Kingdom「Expanses」のレビューで紹介した、モスクワのアンビエント~モダンクラシカルな作品をリリースしているDronarivmから連絡を頂き、少し以前より気になっていた、AARON MARTIN / CHRISTOPH BERGによるスプリット作、「DAY HAS ENDED」を仕入れることになったので、ここでご紹介。

AARON MARTINは、個人的には、Richard Skeltonと並び、日本で過小評価(というより誰もピックアップしていないに等しいから知らない人の方が多いと思うけど)されている弦楽器を用いた、ドローン〜アンビエントの手法で表現している、才能ある音楽家の一人だと思っているのですが、いかんせん、私自身も、商売をしていた身であるわけで、なかなか個性が強い、その魅力を伝えにくいアーティストの作品は、正直売りにくく在庫のリスクもあるので、しょっちゅう仕入れることはあまりなかったというのもお恥ずかしい限りです。

彼は、アメリカ/カンザス在住のマルチ奏者。11歳からギターとドラムを始め、17歳でチェロを始めたよう。彼のデビュー作「Almond」をリリースしたオーストラリアのPreservationレーベルサイトでは、チェロを始めるまでは、ニルヴァーナなど、ごくごく普通のティーンが聴くロックを聴いていたのが、17歳のとき、メタリカの作品に参加している、チェロカルテットの作品を聴いたことで、チェロを始めるようになったんだとか。そんないきさつはともあれ、現在の彼は、とにかく、いろんなアーティストとのコラボや作品に引っ張りだこで、それだけ同業者の信頼が厚いということでもあるわけです。いくつか全く取っ付きにくい作品もありますが、オーストラリアのPreservationから出ていた作品はどれもすばらしいですし、11月にフランスのレーベルEilean Rec.から出る最新作「Comet’s Coma」はアルバムプレビューを聴いただけでもメチャクチャ最高なんで、ぜひ彼の音楽に耳を傾けていただきたいです!(もちろんここで紹介している作品も)

そしてもうひとり、CHRISTOPH BERGですが、ドイツはベルリンのサウンドアーティストで、Field Rotationという名義でも活動をしています。ポストクラシカルサウンドが入り交じった、ミニマルアンビエントサウンドが特徴で、これまで、Fluid Audiohibernate、そしてDenovali Recordsから作品をリリースしています。ソロ名義としては、Facture(Fluid Audioは、Factureのサブレーベルです)から2012年に「Paraphrases」を出しています。

この「DAY HAS ENDED」では、共演という形ではなく、各自の作品が収録されているのですが、Denovali Recordsのコンピレーション作品「15 Shades of White」では、実は2人共演しているんですよね。(ちなにみこのコンピ、すごく豪華なアーティストがたくさん参加しているのでぜひチェックを!)AARON MARTIN独特の、厳格な響きを奏でるチェロと、CHRISTOPH BERGによるものと思われるピアノやエレクトロニクスを用い、淡く切ないサウンドはいつまでも浸っていたくなるものでした。

「DAY HAS ENDED」はスプリットという形をもっていますが、作品全体を聴いていると、あまり極端な違和感を感じることなく聴くことができたのは、あらかじめテーマが決められていたからだろうと思います。日が暮れるまでのひとときをサウンドにした、時に憂鬱な側面もふと覗かせたりしますが、その反面とてもメランコリーで親密な作品でもあります。

Aaron Martin / Christoph Berg – Today Has Been Alright from The New Honey Shade on Vimeo.

それにしても、AARON MARTINの、チェロを含め、マルチな才能を遺憾なく発揮し生み出される、神秘性を讃えた荘厳な響きは、相変わらずというか、やっぱり堪りませんね〜。方や、CHRISTOPH BERGの方は、AARON MARTINの流れを引き受けつつも、彼ならではの、メランコリックさが含まれた、繊細で優美なサウンドを存分に聴かせてくれていて、彼のこれまでのどの作品よりも魅力的です。CHRISTOPH BERGは、今年から来年にかけて、Rauelssonや世界最速とも言われる、ミニマル・ピアニストLubomyr Melnykらとライヴで共演しているのですが、今後、モダンクラシカル〜アンビエントな流れにますます磨きがかかることでしょう。この作品を聴いてても、そんな可能性を感じさせます。

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■ アーティスト:Aaron Martin / Christoph Berg
■ タイトル:Day Has Ended
■ レーベル:Dronarivm
■ 品番:DR-14
■ ジャンル:モダンクラシカル/アンビエント/エクスペリメンタル
■ リリース年:2013年

<アーティスト / 収録曲>
01. Aaron Martin / Slow Wake
02. Aaron Martin / Burl
03. Aaron Martin / Comfort Of Shadow
04. Aaron Martin / Night Never Came
05. Christoph Berg / Pillows
06. Christoph Berg / Today Has Been Alright
07. Christoph Berg / Things Are Sorted, Finally
08. Christoph Berg / Coda

 
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2014年10月26日 | Posted in 音楽レビュー | タグ: , , , Comments Closed 

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