Juxta Phona「We Will Not Be Silence」〜独創的な電子音が生み出す幻想的なエレクトロジャズ
text : Kenji Terada (PASTEL RECORDS)
米デンヴァー在住の Jason Corder による新たなプロジェクト、Juxta Phonaの作品がHome Normalよりリリースされました。Jason Corderは、Offthesky名義でお馴染みですが、本当に多作家です。ひとつひとつの作品を取り上げるもの大変なくらい数多くの作品をリリースしていて、別のプロジェクト(Color Cassette, Kinder Scout, Muridae, Shelter’s End, Social System)やコラボ作品を併せると、とてもここで紹介したいJuxta Phonaまでたどり着くことができません。この多作ぶりはMachinefabriekを彷彿とさせますが、彼の場合は、なんというか、良い意味でのバランス感覚が優れた人だな〜と作品を聴くたびに思ってしまいます。思いっきり実験的なことをしているんだけど、どこか洗練されているところもある。そんなセンスがこのJuxta Phonaでも変わらず感じることができます。
このJuxta Phonaというのは、 Jason Corderのプロジェクトなんですが、過去に、なぜか、Juxta Phona&Offtheskyというコラボ(?)作品「!Escape Kit!」をBluetech名義で作品をリリースしているEvan BartholomewのレーベルNative State Recordsのサブ・レーベルであるSomniaからリリースしていますが、それ以来となる作品です。今作では、Ian Hawgood, Matt Yarington (Set In Sand), Morgan Packard, Gurun Gurun, Colin Campbell、Brian ArchinalそしてSarah Chungこと、Pillow Gardenらが参加しています。
とにかくどんなプロジェクトでも、鳴らされる音の説得力が個人的には好きなんですよね。実験的なサウンドを鳴らしているんですけど、それが彼のバックグランドに裏打ちされた結果としてリアルに伝わってくる。確かにJuxta Phonaは、 Jason Corderのプロジェクトの中でも、Color Cassetteと並ぶ、聴き心地の良い部類に入る音楽なんですが、ここでは、彼の作品に意外と出てくる、ヴィブラフォンの演奏がより印象的で、ダビーなリズムも含め、masayoshi fujitaによるel fog名義の作品を思い浮かべてしまった。
パーカッシヴな質感なんだけど規則正しくブレのないシャープなリズム。そこにたまらなくクールなヴィブラフォンやギターが絡みつくスリリングな展開を聴かせる冒頭からカッコイイ。打楽器というか、身の回りにあるような物を叩いている音を効果的に使い、独創的な電子音のテクスチャーとの組み合わせで、スペイシーでアーバンなエレクトロジャズを聴かせてくれる。もちろん、真夜中な趣たっぷりである。特に4曲目の”Swallow Shallow”なんかでは、morgan packardのサックスを迎え、サンプリングやフィールドレコーディングを取り込みながらタメの効いた重いリズム、ヴィブラフォン、スピリチュアルなサックスがじわじわと緊張感とミステリアスさを増幅させてゆく。
作品全体はリズムの要素が多いトラックが多いはずなんですが、カット& ペースト、セルフサンプリング、プロセッシング等の手法を駆使し、アコーステック楽器とエレクトロがうまく共存し合ったディープで美しい音響空間と、ハッとさせるスリリングな高揚感、両面を味わえる作品となっています。
■ アーティスト:Juxta Phona
■ タイトル:We Will Not Be Silence
■ フォーマット:CD
■ レーベル:Home Normal
■ 品番:HN083
■ ジャンル:エレクトロニック/ミニマル/ダブ/アンビエント/ジャズ
■ リリース年:2015年
<収録曲>
01. we are the shakers of the world
02. metaphysical fashion statement
03. alleyway angelwitch way
04. to the top of the trough
05. faster still
06. passive makes perfect
07. we will not be silence
08. by long sea breakers
09. we are the shakers (escaping animals remix)
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