VERONICA CONDOMI con PABLO FRAGUELA「CAMINO DE ESTRELLAS」〜あたたかな母性が歌とともに…
text : Kenji Terada (PASTEL RECORDS)
ヴェロニカ・コンドミというアルゼンチンの女性アーティストの事は、アルゼンチン音楽を聴いている人以外、なかなか出てくる名前ではない思う。でももし、日本でもファンの多いカルロス・アギーレやキケ・シネシの音楽に心動かされた人は、ぜひ彼女の歌に耳を傾けてみるべきだと思う。
既に30年以上ものキャリアを持ちながらも、ヴェロニカ・コンドミのソロアルバムは、2007年にリリースされた、「Remedio Pal Alma」(これ今聴いても変わらず彼女のまっすぐな歌が素晴らしい彼女オリジナルなフォルクローレが聴ける名盤!)のみ。
ただし共演作は多く、名ギタリストエルネスト・スナヘール、パーカッション奏者のファクンド・ゲバラとのトリオ作でのジャズ路線や、70年代に、プログレッシヴ・ロック・グループM.I.A.のヴォーカルだった、リリアーナ・ヴィターレとの前衛路線など、彼女の音楽的振れ幅は、モダン・フォルクローレという言葉以上に豊かなのである。
そんなヴェロニカ・コンドミの2014年にリリースの今のところ最新作「CAMINO DE ESTRELLAS」は、モダン・フォルクローレ・シーンで活躍するピアニスト、PABLO FRAGUELA(パブロ・フラゲラ)と作り上げたもの。
彼のこんな映像があります。
クラシックの素養も十分の実力派のピアニストのようですね。
日本でアルゼンチン音楽のブームを再燃させたピアニスト/シンガー・ソングライター、カルロス・アギーレや、幼少をアルゼンチンで過ごした人なら一度は口づさむという「カメのマヌエリータ」など歌手、詩人、童謡・童話作家として活躍した、マリア・エレナ・ワルシュ、フォルクロリック・ジャズの名グループ、アカ・セカ・トリオのメンバー、フアン・キンテーロ、フォルクローレ界屈指の名作詞・作曲家/ピアニストのクチ・レギザモンといったアルゼンチンで親しまれている作曲家のほか、チリ屈指のフォルクローレ・シンガー、ビオレータ・パラの娘であるイザベル・パラや、ブラジルを代表する作曲家/歌手、カエターノ・ヴェローゾといったラテンアメリカを代表する楽曲を中心にヴェロニカ・コンドミ自身のオリジナルも差し込みながらの構成となっています。
30年以上のベテラン…といえばなんだか味わいはあるけど、アクの強いイメージを想像してしまうひとも多いのでは?ましてや南米音楽をしょっちゅう聴いていない人だったら、作曲家の紹介だけでスルーしてしまうかもしれません。が、ここはちょっと、今までの予備知識を一旦リセットしてもらって、まず彼らの演奏する”La nochera”を聴いてほしいです。
瑞々しいこぼれ落ちる滴のようなピアノの伴奏に乗って、ヴェロニカ・コンドミの豊かな歌唱が何の疑いもなく心に響きわたる。その歌声に聴き入っていると心がとても豊かな心持ちになる。パブロ・フラゲラとのコーラスもとても親密。マリア・エレナ・ワルシュの” Baguala de Juan poquito”では、カリンバを用い、素朴であたたかな音色に、控え目ながらしっとり印象に残る繊細なタッチを聴かせるピアノと、ストリングスが夢見心地な雰囲気を演出している…。オリジナルもフォルクローレをバック・グラウンドに持ちながらもとても洗練されたジャジーでフォーキーな作品。
ゲストヴォーカルやアコーディオン、ヴァイオリンやパーカッションも入っていますが、全編、演奏は歌とピアノを中心とした極力シンプルなもの。だけどその分、技術に裏打ちされた鮮やかな旋律とともに歌のサポートも忘れない趣あるピアノの演奏に、母なる大地の母性が歌声になったかのようなヴェロニカ・コンドミの歌唱が本当に素晴らしい。あぁ〜もっとたくさんの人に知ってもらいたい名品です。
VERONICA CONDOMI con PABLO FRAGUELA「CAMINO DE ESTRELLAS」
01. La nochera (Jaime Dàvalos-Ernesto Cabezas)
02. Comadre Dora (Néstor Soria-Rubèn Cruz)
03. La tarka (Carlos Aguirre)
04. El desconfiado (Isabel Parra)
05. Baguala de Juan poquito (Marìa Elena Walsh)
06. Zamba de mi esperanza (Luis profili)
07. Viejo cantor (Juan Quintero)
08. A don Rosa Toledo (Ramón Navarro y Ramón Navarro hijo)
09. Juan del Monte (Cuchi Leguizamón)
10. No me arrepiento de èste amor (Gilda)
11. Desde que o samba è samba (Caetano Veloso)
12. Tengo un pie en el aire (erónica Condomì)
13. Sòlo el color (Verónica Condomì)
14. Camino de estrellas (Verónica Condomì)
15. Campana de palo (Marìa Elena Walsh)
16. Entre curdas (Aldo Quirolo, Roberto Morel y Carlos Meyel)
関連記事
Tambour「Chapitres」〜ピアノとストリングスが美しく調和し、ミニマルに舞いながら、甘く切ないストーリーを紡いでゆく…。
Federico Durand & hofli「点対称の園丁へ 〜 El jardín de la armonía」
Dylan Golden Aycock「Church of Level Track」〜Takoma Schoolのルーツをレゾナンスさせた、イマジネーション豊かな調べ
Ed Carlsen「The Journey Tapes(Deluxe Edition)」〜幻想的な音の創造にパラフレーズされたおとぎ話の風景
masahiko mikami + masayoshi fujita「conjecture」〜美しく心地よいひとときを運んできてくれる、音と音とのダイアローグ