アイルランドの伝統音楽と現在のアプローチが溶け込んだ美しいアンサンブル〜Ensemble Ériu

text : Kenji Terada (PASTEL RECORDS)

伝統音楽に根ざしながらも、より現代的なアプローチで新しい価値観を見つけ出そうとする音楽家はどこの国にも存在する。近年アルゼンチンにおけるコンテンポラリーフォルクローレの流れなんかもそうなんですが、例外を除いて大部分は興味をそそるものって正直あまり多くはないんですよね。ただ、今回紹介するEnsemble Ériuは、その例外の一つ。Jack TaltyとNeil O’Loghlenを中心としたこのグループは、アイルランド伝統音楽が根底にありながらアコースティックな響きによる、緻密で豊潤なアンサンブルで紡がれる、伝統と現在のアプローチが溶け込んだ演奏を奏でるグループで、2013年にRaelach Recordsより、セルフタイトル「Ensemble Ériu」でデビュー。2016年には2作目となる「IMBAS」をリリースしています。

フィドルや、コンサーティーナのユニゾンによる、アイルランド独特な旋律を真ん中に感じながらも、それらをジャズや現代音楽によるアレンジで解体し、彼ら独自の手法で、伝統の可能性を追求してゆくスピリチュアルなサウンド。「Ensemble Ériu」「IMBAS」からは、センチメンタルかつノスタルジックな親しみやすさと、神聖さが同居したオーガニックなアンサンブルが美しく響く。いずれの作品も伝統音楽の新たな価値観に魅了されることでしょう。

2016年08月12日 | Posted in 音楽レビュー | タグ: , , , Comments Closed 

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