Ed Carlsen「The Journey Tapes(Deluxe Edition)」〜幻想的な音の創造にパラフレーズされたおとぎ話の風景
text : Kenji Terada (PASTEL RECORDS)
エレクトロニックサウンドデザイナーからクラシック作曲家まで、環境音楽と映画音楽の領域を結ぶ、カナダのレーベル、Moderna Recordsより、イタリア生まれの作曲家/プロデューサーで、現在は、デンマークはコペンハーゲンを拠点に活動する、Ed Carlsenの作品「The Journey Tapes(Deluxe Edition)」がリリースされました。
実は、今年9月に「The Journey Tapes」はリリースされているのですが、今回の”eluxe Edition”は、オーストラリアのLuke Howard、ドイツのLambert、バルセロナ在住のアルゼンチン人作曲家Bruno Sanfilippoといったピアニストに、オランダのSjaak Doumaのプロジェクト、Analogue Dearの計4組のリワーク音源が追加された仕様で、その人選、いずれも要チェックしたくなる人物ばかりで、オッと気になるものでした。何より、以前のポストロック隆盛期同様、世の中にはモダンクラシカル作品が溢れでて、価値ある作品を判断するのががなかなか難しい中、Ed Carlsenの作品から、才能ある音楽家への繋がりが確認できることは、作品への価値を見定める判断材料の一つにもなります(もちろんそれが全てではないですが)。
さて、Ed Carlsenですが、インフォによると、幼少期よりクラシックのピアノを始めてはいるものの、ピアニストではなく、ギターをメインに20年以上、音楽活動を続けてきたとあります。ロック、レゲエ、プログレ、クラシックなどジャンルは様々なのですが、その辺の詳細はあまり触れられていません。その後、London College of Musicで、音楽テクノロジーについて学びながら、サウンドデザインに興味を持ち、映画や映像メディア向けの音楽を作り始めます。そして、2015年に、Steven Wilsonと、Nils Frahmのライヴを見たことがキッカケで、再びピアノを再開し、本作「The Journey Tapes」を作り上げてゆきます。
まるで、おとぎ話に出てくるような風景の、デンマークはRavnholmの森に触発されたという「The Journey Tapes」は、彼の言う不完全なる美しさと、幻想的な音の創造にパラフレーズされた、ピアノと、弦楽器、そして、所々にエレクトロニカのテクスチャーを加えたサウンドスケープ。
Ed Carlsenの、ぬくもりと、瑞々しさを湛えたピアノの旋律と、優美に奏でられるストリンクスが、エモーショナルに交わりあい、重厚感とはまた違った、パーソナルな優しさに包まれる。1曲だけゲストヴォーカルを迎えたナンバーもメランコリックでドリーミーなサウンドプロダクションがたまらなく心地よく、ジャケットのイメージをより幻想的にしたような、儚げな世界が広がっています。
また、Luke Howard、Lambert、Bruno Sanfilippo、Analogue Dearそれぞれの解釈でEd Carlsenの楽曲の世界をシンプルに描いている。シンプルさがかえってそれぞれの個性が滲み出ていてぜひ原曲と比較して楽しんでいただきたいです。
Tracklist
01. Close
02. Cage
03. Grey
04. Rain
05. Loose
06. Far
07. Hundrede Træer (Bonus Track)
08. Close (Luke Howard Rework)
09. Loose (Lambert Rework)
10. Rain (Jacob David Rework)
11. Far (Bruno Sanfilippo Rework)
12. Hundrede Træer (Analogue Dear Rework)
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