Akinori Yamasaki「海のエチュード」〜穏やかで、予期せぬ出来事も受容してしまう本当に美しい作品
穏やかで、予期せぬ出来事も受容してしまう本当に美しい作品
サウンドアーティスト・鈴木昭男氏のアシスタントを務めた経歴をもつ、京都府丹後半島在住のギタリスト/作曲家、Akinori Yamasaki。2005 年に英国音楽誌WIREのサポートのもと、ファースト・アルバム『RED FIELD』をリリースしてから、実に8年ぶりとなるセカンド作が、この「海のエチュード」です。
2013年12月末に、pastel recordsは、販売活動を休止したわけですが、その直前、この作品はリリースされていて、それが個人的に2013年のベスト作の一つに挙げたいくらい素晴らしい内容の作品だったのですが、閉店前の慌ただしさから結局ショップで紹介することはできずじまいに・・・。なので、公園喫茶、最初のレビューで、この作品をぜひピックアップしたいと思っていたのです。
リリース先は、僕の長年の友人でもあり、イベントでもお世話になっている、浅利大生君のレーベル、sukima industriesから。ヤマサキさんのことは、浅利君を通じて、知ったのですが、彼の演奏を真近で見たのは、2011年に、flauからリリースしている、ベルギー人ピアニスト、Jean-Philippe Collard-Neven(ジャン・フィリップ・コラール・ネヴェン)の奈良公演。リハの時から、本当に、懐の深い人だな~と感じることが多かった。
実験的な素養もある人なんですが、事前に、ジャン・フィリップ・コラール・ネヴェンの作品を聴いていただいてたのか、ジャンの音楽を目当てに聴きに来てくれた、お客さんをも惹きつける、アコーステックなライヴ構成で聴かせてくれたのですが、そんな中でも、彼の卓越した技術と、感性豊かな表現の中から溢れ出す実験性が、うまく調和された演奏はとても印象に残っている。なんせ、今だから言えるかもしれないけど、共演者に超辛口だった、ジャンが山崎さんの演奏にくぎ付け~絶賛していたほどですから。
「海のエチュード」は、何のトリックも仕掛けもない、ただただ山崎さんの心象を丁寧に紡いでいる作品だと思う。レーベルサイトの資料からの抜粋になるが、丹後の海を端正なコンポジションで描写した「海のエチュード」三部作や、師・鈴木昭男氏 の楽曲を新たな解釈で採り上げた「Ta Yu Ta I #11」、京都在住の音楽家・中川裕貴氏との即興演奏によるコラボレーション「seventh phase 」を含む全六曲で構成されている。
ここで聴かれる山崎さんのギターテクニックは、確かに聴いていてて凄みを感じさせるところもありながらも、それは、その一瞬の情景を照らし出す、何ものかに変わってゆく…。ここで聴かれる旋律の余韻ひとつひとつが、ジャケットで使われている、奈良在住の画家・中尾めぐみさんが描く海の雰囲気のように、穏やかでいながらも、予期せぬ出来事をも受容してしまう美しさが広がっています。
- Heaven
- Ta Yu Ta I #11
- seventh phase
- 海のエチュード第1番/ etude of the sea No.1
- 海のエチュード第2番/ etude of the sea No.2
- 海のエチュード第3番/ etude of the sea No.3
関連記事
Tambour「Chapitres」〜ピアノとストリングスが美しく調和し、ミニマルに舞いながら、甘く切ないストーリーを紡いでゆく…。
Federico Durand & hofli「点対称の園丁へ 〜 El jardín de la armonía」
Dylan Golden Aycock「Church of Level Track」〜Takoma Schoolのルーツをレゾナンスさせた、イマジネーション豊かな調べ
Ed Carlsen「The Journey Tapes(Deluxe Edition)」〜幻想的な音の創造にパラフレーズされたおとぎ話の風景
masahiko mikami + masayoshi fujita「conjecture」〜美しく心地よいひとときを運んできてくれる、音と音とのダイアローグ