Otto A Totland「Pino」~幻想と、感情の広がりをデリケートに描くピアノ作
4月にSonic Piecesのショーケースの一員として来日する、ノルウェー人のOtto A Totland。
幼なじみのErik K SkodvinとのDeaf Centerや、Hauschka、Colorlistなどの10″をリリースしているSereinのオーナーHuw Robertとのプロジェクト、Nestでも活動中なのですが、今回の来日では、今年1月にリリースされた、彼の初ソロ・アルバム「Pino」での世界をじっくりと聴かせてくれる内容となるでしょう。
この「Pino」は、きっとDeaf Centerでの彼のイメージを変えるものになる作品だと思う。ダークでエクスペリメンタルなクラシカルドローンの印象は、ここでは一旦頭から消してもらって、Goldmundの『Corduroy Road』や、Nils Frahmの『Felt』など、ノスタルジックな質感をもった作品を聴くのと同じ感覚でぜひ接して頂きたい素晴らしい作品なのです。
ここでは、タイトル通り、ピアノと、フィールドレコーディングを加えた内容のまるで静寂の水面に降り立つ水鳥が作り出す波紋のような、ゆったりと一つ一つの音が心を込め丁寧に紡ぎ出される、美しい調べの小品で味わい深い18曲が収録されています。
よく雰囲気だけのあまり訓練されていない素人弾きのピアノ作品が横行している(良いのもあるんだけど幻滅するものがほとんどなんで)中で、Otto A Totlandのピアノは、派手に人目をひくものではないですが、音楽は厳格に構成され、深い叙情をたたえています。
そういえば、ツアーのことで、flauのオーナーと打ち合わせているときに、せっかくDeaf Centerの2人が来てるんだから、Deaf Centerもライヴしてくれないかな~なんて話になったんですが、本人いわく、Deaf Centerという立場でライヴする場合と、Otto A Totlandとして演奏するのとは、音楽に向き合う時の精神状況が全く違うらしく、同じ日に、両方はできないとのことでした。
まあそういうことも、「Pino」を聴けば、なるほどな~と頷けます。静かに幻想と、感情の広がりをデリケートに描いてゆくの部分においては、Deaf Centerにもこのような要素はあるんですけど、やっぱり気持ち的には同じテンションでは演奏できないよなぁ~。
時折、やさしさと物悲しさとが交差しながら、たとえば「Oana」や、タイトルにもなっている「Pino」の他、気品とやさしさに満ちた、印象に残る曲も多い。レコーディングは、お馴染み、Nils FrahmのDurton Studiosで。
ぜひ来日前に、聴いて頂き、ライヴ会場で彼のメランコリックなピアノに触れて頂きたいです。
Otto A Totland
1979年、ノルウェー・ポールスグルン出身。14歳でキーボードを使ったトラックメイキングを始め、徐々にその明晰でメランコリックなピアノ奏法を確立。初のソロアルバムとなる『Pinô』が今年Sonic Piecesよりリリース。Nils FrahmのDurton Studioで録音され、儚くも美しい旋律をくぐもったピアノの独特な音色と静謐な残響で聞かせる秀作として人気を集めている。幼なじみのErik K SkodvinとのDeaf Center、SereinのオーナーHuw RobertとのNestでも活躍中。
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Sonic Pieces Japan Tour 2014
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