Rauelssonの初期作品から最新作「Vora」 までをたどるディスク紹介
今月18日よりスタートする、Sonic Pieces ジャパンツアー。来日メンバーの中に、MayMayのメンバーとしての来日も記憶に新しいスペイン人シンガーソングライターRaúl Pastor MedallによるプロジェクトRauelssonの名が入っております。
Sonic Piecesからの作品「Vora」が最高だったものの、日本国内で、CDは、既に完売入手不可の状態。アナログは、まだおそらく入手可能だと思いますが、ここ日本でのアナログ需要の現状を肌で感じている者としましては、正直彼の作品が広く聴かれているとは到底思えず、ぜひこの素晴らしい作品を通常ラインのCDで、再プレスしてもらいたいと願っております。
とはいえ、せっかくRauelsson再来日なんで、ぜひ多くの方に彼の演奏を聴いて頂きたい。ライヴに関しては、今回「Vora」からの演奏が中心になってくると思いますが、ここで昨年リリースされた「Vora」までにリリースされたアルバム作品を順にご紹介したいと思います。
彼は、2010年に、Laura GibsonやNorfolk and Western、Peter Broderick、Loch Lomond、Kele Goodwinのリリースで知られるポートランドを代表する人気レーベルHushより『La Siembra, La Espera Y La Cosecha』をリリースします。スペイン語で歌われる、彼のナイーヴな歌声と、ポートランドの豊かな自然を感じさせる、アメリカーナなフォーキーサウンドがとても心地よい作品でです。
『La Siembra, La Espera Y La Cosecha』
そして2011年にリリースの『Réplica』は、ポスト・クラシカル・シーンを代表する…というかそんな枠を超え日本でも人気のミュージシャン/作曲家、Peter Broderickとのコラボレーション作品です。ここでは、全2曲、それぞれ約15分、20分とかなり尺の長い曲ながら、1曲の中にそれぞれの風景、心の揺れがゆったりと描かれ、一つのテーマで数曲の楽曲が連なっているようなかんじで、全く聴いてて苦にならないのです。Rauelssonの純真なフォークと、ヨーロッパ的なノスタルジック感が、Peter Broderickのインストゥルメーションとアレンジセンスに委ねられ、ナチュラルな美しさがすっきりとした感動を与えてくれる見事な作品に仕上がっています。
『Réplica』
おそらくこの作品を通じて、Nils FrahmやSonic Piecesなど、ベルリン人脈が生まれ、『Vora』へと繋がってゆくのではないかと個人的に推測していますが…。また2人のコラボライヴの映像も公開されてます。
そして2012年には、LAの映像作家Susan Finkによるドキュメンタリー映画のサウンドトラック『From River To Sea』をリリースします。この作品では、Rachel Blumberg、Heather Woods Broderick、Adam Selzer、Nicholas Marshallというポートランドのミュージシャンたちや、同時期にスタートしていた、グループ、MayMayのヴォーカリスト/ソングライターのLaurel Simmonsらポートランド人脈のミュージシャンが参加。ピアノやストリングスを中心とした、牧歌的なムード漂う、インストゥルメンタルなナンバーが中心となっています。サントラ作ながらもオリジナル作としても何ら遜色のない、これも実にすばらしい作品です。
『From River To Sea』
そして、2013年にいよいよ、『Vora』がSonic Piecesより、リリースされます。この作品、2012年のMayMay来日時にはほぼ出来上がっていた作品で、『Réplica』以降すぐに作品制作に着手していたんでしょうね。ここでは、ある意味、シンガーソングライターというイメージを一旦頭から消して、聴いてもらう方がいいかもしれません。ピアノ、ストリングス、シンセを中心とした、シネマティックで静謐なポストクラシカル〜アンビエント作となっており、Nils Frahm、Dustin O’Halloran〜A Winged Victory For The Sullenなどの名作に並ぶ、作品と言っても良いと思います。
レコーディングは、自宅を含め、ポートランドのタイプファウンドリーと、ベルリンのダートンスタジオで行われております。ミックス&マスタリングはニルス・フラームで作品にも参加しています。他にも、MayMayのメンバーLaurel Simmonsも参加していますが、一部コーラスが入るものの、ほぼインスト作となっています。静寂の中響くピアノのが奏でる密やかなメロディー。ストリングスに加えシンセによるサウンドスケープはどこかジャーマンエレクトロ/アンビエントを少し思い浮かべてしまいましたが、じわじわと壮大に広がるサウンドスケープの持つ浮遊感と浮かび上がる重厚な音響と、叙情的なメロデイーにただただぼんやり聴き入ってしまうばかりなのです。
『Vora』
今回紹介したほとんどの作品は、現在CDでの入手が困難で、HUSHの作品の場合はbandcampからデジタルダウンロード購入が可能ですので、まだ未聴の方はぜひ聴いて頂きたいです。
最後にいくつか最近のRauelssonのライヴで「Vora」からの楽曲をご紹介したいと思います。
こちらは、”Parasol”。彼のライヴでの構築がよくわかるカメラアングルになってますね。ジャーマンエレクトロを思わせる展開なんですが、ライヴではより自由度が増しています。
Rauelsson live at the Union Chapel from Gianmarco Del Re on Vimeo.
そしてこちらは、Nils Frahmとも共演作をリリースしている、Anne Müllerと”split”を。
そしてこちらは実際こんな風なライヴになるかはわかりませんが、お客さんも参加の”Wave Out”これ会場に来てくれた人とやりたいな~。集客次第だろうけど…。
いかがでしょうか?Rauelssonのライヴ興味湧いて来ませんか?
まだご予約大丈夫だと思いますので、ぜひお近くの各会場に足をお運びください。次は、Sonic Piecesのモニークさんも信頼を置く、Erik K Skodvinの最新作「Flame」をご紹介します!
さてさて、Sonic Pieces ジャパンツアーの日程は、下記画像クリックしチェックしてみてくださいね!!!ちなみに奈良はこちらです。ぜひぜひ皆様のご予約お待ちいたしております!
関連記事
Tambour「Chapitres」〜ピアノとストリングスが美しく調和し、ミニマルに舞いながら、甘く切ないストーリーを紡いでゆく…。
Federico Durand & hofli「点対称の園丁へ 〜 El jardín de la armonía」
Dylan Golden Aycock「Church of Level Track」〜Takoma Schoolのルーツをレゾナンスさせた、イマジネーション豊かな調べ
Ed Carlsen「The Journey Tapes(Deluxe Edition)」〜幻想的な音の創造にパラフレーズされたおとぎ話の風景
masahiko mikami + masayoshi fujita「conjecture」〜美しく心地よいひとときを運んできてくれる、音と音とのダイアローグ