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Library Tapes「Escapism」〜研ぎ澄まされた感性が美しく響き、深い味わいが心に残る作品に

David Wenngrenによるソロ・プロジェクトLibrary Tapesの最新作「Escapism」が自身のレーベルAueticよりリリースされました。前作2012年の「Sun Peeking Through」以来、約3年半ぶりとなる作品で、現在、David Wenngrenが運営に関わっている、1631 Recordingsの勢いと相まって、ポスト・クラシカルのオリジネイターとして存在感が、今再び盛り返してきている印象も受ける充実した内容となっています。

現在のモダン・クラシカル(日本でのポスト・クラシカルという言い方は欧米ではあまり使われていないみたいです)作品をリリースしている音楽家は、幼少時よりクラシックの教育をきちんと受け、テクニカルな技巧に裏打ちされた表現によるものが多い一方、彼の場合、2008年最初の来日の際に交わした会話の中で、「ピアノを始めて3年くらい」と言っていたのがものすごく印象に残っていて、だからこそ、ピアノをメインとはしているものの、ピアノだけの表現にこだわらず、自身の内面を映し出すような、アンビエント〜ドローンにも近い、エモーショナルなサウンドスケープで、デビュー作から数作は、ポスト・ロック中心のレーベルからリリースしていることも、マックス・リヒターのような、コンテンポラリーなクラシックの音楽家とはまた違った立ち位置にいる存在だと思います。

今作の「Escapism」は、これまでのスタイルから特別な変化はないのですが、David Wenngrenの弾くピアノも含め、以前にも増して彼の豊かな音楽性の中に、フィジカルな表現力の幅が広がっていて、研ぎ澄まされた感性が美しく響き、深い味わいが心に残る作品となっています。また、前作「Sun Peeking Through」にも参加し、Antony and the Johnsons、Rasputinaなどへの参加や、ソロとして、Leafより作品をリリースしているチェリスト、Julia Kentの全面的参加も、Library Tapesの、旋律を循環させる簡潔な楽曲構成の中に、ミニマルさだけでは生まれ得ない、幻想性や抒情性を与えています。

これまでの、弦楽器や、フィールドレコーディング、そしてノスタルジック感を演出するチリノイズなどを重ね合わせ生み出す手法から、2人の演奏を中心とした、たゆたう調べは、今までにない、Library Tapesの成熟した姿を実感出来るものとなっています。

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