Sebastián Macchi、Claudio Bolzani、Fernando Silva「LUZ DE AGUA」
忘れがたい余韻を与えてくれる名作
2010年あたりから、じわじわと盛り上がりを見せてきた、アルゼンチンのモダン・フォルクローレ・シーン。色々と、名作の国内盤リリースが続いてはいる中で、なぜこの作品の国内リリースがないの?と不思議になるくらいの名作がようやく日本でも紹介されることとなりました。アルゼンチン・コンテンポラリー・フォルクローレ・シーンを中心に、幅広く活動する 3人のミュージシャン、セバスティアン・ マッキ、クラウディオ・ボルサーニ、フェルナンド・シルヴァが生み出す、「Luz de Agua〜水の輝き」と題された、モダン・フォルクローレ・シーンを代表する名作。3人共、様々なクループや、ソロでの活動も活発なのですが、それぞれのキャリアを代表する作品となれば、真っ先にこの作品が挙げられるでしょう。
2005年に、日本でもおなじみ、カルロス・アギーレ(1曲パーカッションで参加)主宰レーベル「シャグラダ・メドラ」よりリリース。エントレ・リオス~パラナを代表する詩人フアン・L・オルティスの詩に美しい曲をつけたもの。言葉で伝えると実に簡素な表現となってしまいますが、この作品に流れる3人による演奏は、時を超え、フアン・L・オルティスの感じた美しい風景に共感し、リスペクトを込めたものだからこそ、時代に流されない魅力が滲み出てくる。
8割方、1曲目の”Rosa Y Dorada”が、好みか、好みでないかで、聴く人の作品の評価が決まってしまうのではないでしょうか?それくらいこの作品の1曲目のインパクトは個人的に感動ものでした。「水の輝き」というタイトル通りの、透明感のあるサウンドと、おおらかでありながらも、彼らの故郷であるパラナの美しい自然と繊細に描き上げる風景が重なり合い、パラナのことを知らない日本人にも、これら情緒豊かな楽曲の調べは、心の琴線に通じるものがあります。セカンド作になると、3人によるイマジネーション溢れる演奏力の方にもう少し力点が置かれるのですが、このファーストは、詩の持つムードを大切にするような歌ごころメインに、ピアノにしても、やわらかなギターやコントラバス、チェロを含めたアレンジ共々一体となって、安らかな、まるで桃源郷で響く美しい郷愁のメロディーを導き出す…。彼らの歌や演奏の数々は、どれも忘れがたい余韻を与えてくれます。
今回の国内盤化にあたり、フアン・L・オルティスの詩の対訳も完全掲載!どんなことを詠っているのか輸入盤ではわからなかったことが、今回よりこの作品の持つ世界観に触れられるような気がしてとても意義深い国内盤化となったと思います。
カルロスアギーレや、「Luz de Agua」に参加している音楽家、又はアカセカトリオの面々などを知ることは、個人的に、一時期日本でも盛り上がった、アルゼンチン音響派と言われた、ファナ・モリーナ、フェルナンド・カブサッキ、モノ・フォンタナ、アレハンドロ・フラノフといった人脈にとどまらず、さらにその先で脈々と受け継がれているアルゼンチン音楽の素晴らしさの一端を知る、きっかけとなるものでした。知れば知るほど底なしのように、日本人にも親しめる魅力ある音楽家がたくさん存在するのです…今、ブエノスアイレスの音楽シーンも含め、グラフィック・デザイナーの庄子結香(カレラ)さんのthe fictional mapや、公園喫茶の記事でも紹介している、栗本斉さんの「アルゼンチン音楽手帖」なども参照していただければ嬉しいです。
▼公園喫茶「アルゼンチン音楽手帳」から巡るアルゼンチン音楽の世界【その1】
https://www.pastelrecords.com/koencafe/?p=296
<収録曲>
01. Rosa Y Dorada
02. No Era Necesario
03. La Manana Quiere Irse
04. Fui Al Rio
05. Cancion
06. Rumor De Lluvia
07. Anoche Ha Llovido
08. Tarde Otonal
09. Rama De Sauce
10. Claridad, Claridad