Marcus Fischer & Simon Scott『Shape Memory』(12k)
異なる音楽的な背景が交わり合う有機的で密度の高い、ナチュラルプログレッション
ニューエイジ/ノイズ/エクスペリメンタルな嗜好を持つ音楽家から注目を浴びる、ハンドメイドのエフェクター/ジェネレーター/ユーロラックモジュラーなどを独自のアイデアで高品質のパーツをセレクトし全てハンドメイドで製作している、ポートランドにある4ms。
そして、S1/The Synth Libraryは、非営利のアーティストが運営する現代アートセンターS1が運営し、4ms社が提携している、ユーロラックのモジュラーシンセサイザー、モジュラーシンセサイザー、DJギア、レコーディング機器が実践できるスペース。
それぞれが12kレーベルからリリースしている、ポートランド在住のサウンドアーティスト、マーカス・フィッシャーとSlowdiveのドラマーでソロでは音響サウンドアート作品をリリースするサイモン・スコットとのコラボ作品「シェイプ・メモリー」は、2017年の秋、Slowdiveの米国ツアーの合間に、そのS1/The Synth Libraryで製作されたものです。
それぞれが、それぞれあらかじめフィールドレコーディングや加工したアコース ティックサウンド/シンセの音をカセットテープのループに録音したものを持ち寄り、ポートランドにある、S1/Synth Libraryにて、テープループを再生しながら、シンバル、パーカッション、などをライヴサンプリングし、ギターやモジュラーシンセを即興で重ねてゆき仕上げた作品。
両アーティストのソロ作品のファンには、序盤、彼らの持つ異なる音楽的の背景を感じ取ることができることでしょう。シンバルの金属的な共鳴、華麗に残響を与えるマーカス・フィッシャーのギター、そしてお互い持ち寄ったテープループがゆったりと空間に密度を加えてゆきます。それらはまるで、ポストロック、音響を通過した、pan・americanのような催眠的なサウンドを思わせますが、進むにつれ徐々に楽器の輪郭がまどろんでゆき、淡く美しいフローティングドローンに変容してゆきます。
その響きは神秘的な天上のもののようでもあるし、その中で展開されている様々な音のテクスチャーが揺らめき、打ち鳴らされてゆく中で徐々に、深い瞑想的なサウンドに変わってゆきます。サウンドイメージとは裏腹に、顕微鏡を覗くようにこのアルバムをのぞいてみると、きっと、お互いの生み出す有機的で密度の高い、ナチュラルプログレッションに圧倒される事でしょう。
01. Ferns
02. Thorns
03. Branches
https://pastelrecord.theshop.jp/items/12024557