Masayoshi Fujita「Bird Ambience」(Erased Tapes Records)
長年追いかけているアーティストって、基本、今回も素敵な作品届けてきてくれてるなぁ〜といった感じの、なんとなく聴き手側が期待していたり、想像できる感じの音楽のイメージを持ってしまっていて、変わらずお元気で何よりです!みたいな受け止め方になるパターンが多いんですが、Masayoshi Fujitaの最新作「Bird Ambience」は、良い作品になるとわかっていても、強烈にインパクトを残す衝撃だった。まるで、会いたかった古い友人を家に招いたら玄関からじゃなくて、屋根を突き破って入ってくるような(何という例え…)。
個人的には、「Bird Ambience」は、今年の年間ベストの1枚に挙げたいくらいの内容だと思う。ミニマリズムの中にも、何気ない繊細な心配りが演奏に表れていて、これまでの作品には感じなかった、音の響きから伝わる感動が、これまでの作品に無い魅力となっている。その一つに、これまでゲストを迎えた中での演奏だったのが、本作ではベーシックな部分に関してはほぼ一人で作り上げたのではないのかな?と思わせる即興と綿密さで、とことん自分のできることを詰め込んで、磨いて解体してを繰り返し経た上で出来上がったような、佇まいがある。(クレジットを見るとHatis Noitさんがタイトル曲で参加してますね)
冒頭のタイトル曲から、マリンバの打ち鳴らされる波紋のような残響の背後に潜む、鳥のざわめきのような、繊細に画く演奏による描写がじつに美しい。そういえばマリンバは、本作で初めて使われていて、ビブラフォンと共に、メロディ・リズム・ハーモニーを兼ね備えた楽器ではあるものの、マリンバは、木の楽器独特の、土着的な側面を生かしたインパクトと、木のぬくもりある優しい音色を生かしながら、印象深いインパクトと優美さを残す。
また、本作では、大胆にエフェクトをかけたり、el fog名義以来の、グリッチ・ジャズ・ドラムや、エレクトロニクス、インダストリアルなノイジーさも聴くことができる。これも彼のバックグラウンドの一部分でもあるんだけど、これまでのアコーステックな流れからすると、結構勇気がいるだろうなと思う。でもなんというか、作為のない、自然と湧き上がる直感的な試みは、大体はうまくいくパターンが多いし、リリースされるレーベルのErased Tapesで本当に良かったなと思う。
そして、作品全体の流れが素晴らしい。前半〜中盤の流れは、刺激的な部分と、優雅さが混在するような展開で、最初は、之までの作風とは異なった混沌と不思議な感覚が、”Morocco”以降、すっと馴染んでくる。とても瞑想的な展開は、”Stellar”で一旦引き戻されるのですが、そこからの”Pons””Fabric”の浮遊感はもう桃源郷のような心地よさで、ぜひ飛ばさずに最後まで聴ききっていただくことをおすすめいたします。
01. Bird Ambience
02. Thunder
03. Anakreon
04. Cumulonimbus Dream
05. Gaia
06. Noise Marimba Tape
07. Morocco
08. Miyama No Kitsune
09. Nord Ambient
10. Stellar
11. Pons
12. Fabric