魔法の霧に包まれた、懐かしさに溢れる美しい音楽
近年のラウナウ作品でもその手腕を発揮している、スウェーデンの最も人気のある映画作曲家の一人、Matti Byeの作品が2枚リリースされました。あまり日本では知られてはいないのですが、映画音楽の世界でもとても評価の高い音楽家なので、ポストクラシカルや、トム・ウェイツの「ソードフィッシュトロンボーン」の世界が好きな人は、彼の作品を一度は聴いてみることをおすすめいたします。
彼の音楽活動は、映画音楽をメインに、その延長線上でソロ作品をリリースしているような気がします。彼の母親は、有名なスウェーデンの女優、Birgitta Anderssonであり、父親がノルウェーの劇作家Anders Byeであることもそれは自然な流れなのかもしれません。彼の音楽を聴いていると、どの作品も、映像と密接に結びついていることが感じ取れます。Matti Byeの音楽の持つ美しさは、映画の映像美を通して過去を感じていること、またそこに現代のスタイルを同居させることによって、独特のロマンチックなスタイルが生まれて行きます。それは未来に置き去りにされた過去の残香のように、儚くなんとも言えない魅力を湛えているようです。
<収録曲>
01. Memories
02. Monza 1978
03. Monza 2016
04. Monthlhéry
05. Early Days
06. The Dream
07. Go Out Into The World
08. In The Shadow Of Number One
09. Happy Days
10. The Phone Call
11. The Waiting Daughter
12. Lotus 72
13. Dutch Grand Prix 1973
14. Monaco 1970
15. The Funeral
16. Across The Sun
『superswede』はスウェーデンのF1ドライバー、ロニー・ピーターソンのドキュメンタリー映画のサウンドトラック。かつて「スーパー・スウェード(Superswede)」と呼ばれた70年代最速のドライバーだったものの巡り合わせと不運が重なり不遇時代を過ごす。ようやく1978年に、最良のチームとマシンに出会ったものの、それはエースドライバーの待遇ではなく、実際には同僚のマリオ・アンドレッティがナンバーワンというチームオーダーが存在したと言われ、ピーターソンはマリオ・アンドレッティを補佐する役目だった(この件は後に関係者が否定している)。そんな中でも、ロニー・ピーターソンは、チャンピオン争いを続けるが、イタリアGPでの不慮の事故でこの世を去ってしまう。Matti Byeによる、ヴィンテージなピアノ、 グロッケンシュピールやチェレスタと、チェロ、ヴァイオリン、ヴィオラの弦楽器による演奏は、張り詰めた現場のムードを感じさせるものだったりもしますが、不思議と重苦しさは感じないんですよね。
<収録曲>
01. Melt
02. Absence
03. Of Dawn
04. Silence
05. Into The Haze
06. Galloping Waves
07. Loneliness of Earth
08. Piano Street
09. Cascading Sun
10. Forest In The Sea
11. Teo
そしてもう1枚『This Forgotten Land』は、Musette、Directorsoundsをリリースする、スウェーデンのTona Serenadより。Musetteこと、Joel Danellがプロデュース、Tona Serenadのオーナーである、John Henrikssonがサンプラーやターンテーブルで参加。また、Matti Bye作品に多く参加している、Leo Svenssonのミューキジカル・ソウを含め、これまでの作品以上に、奇妙でノスタルジックな、例えば、伝統音楽に彩られたヨーロッパのサーカス音楽のような、非日常的な空間とにおいが感じられるメランコリーが夢の中で漂い、美しいMatti Byeのピアノがまるで星の輝きのように煌めきます。
どちらも甲乙つけがたい素晴らしさなので、ぜひ両方チェックしてみてください。