Max Ananyev「Communication」〜日常のリズムに束縛されない、ロシアの壮大な自然を喚起させる厳かで美しいギターアンビエント
ロシアは、サンクトペテルブルクを拠点に活動をする作曲家/サウンドプロデューサーの、Maxim Ananyevの初ソロ名義作のアルバム「Communication」が、ポーランドのレーベルPreserved Soundよりリリースされました。彼のキャリアは、これまで、AMVI、Tree Bosierといったプロジェクトの作品が中心だったのですが、ソロ名義としては、初めてとなるフィジカルでのアルバムリリース作品です。
AMVIは、ギター演奏を中心としながら、アイスランドの、ベッドルームコミュニティーを思わせる、シネマティックで、インダストリアルな音像があったり、アブストラクトなビートを含め、ミニマルな打ち込みによるエレクトリックなサウンドスケープが絡まったり。片や、Tree Bosierは、完全にドリーミーな、シューゲイズ、ヒップホップ、テクノといった言葉が思い浮かぶ多彩なエレクトリックサウンド。
その一方で、Max Ananyevは、素晴らしいクラシックギター奏者でもあり、本作や、AMVIでの作品でもそのことがよくわかりますが、彼のルーツの一端として、2015年にデジタルで配信されているギターカヴァー集「Pieces for Acoustic Guitar (Part 1)」があります。この作品は、チャイコフスキーやバッハ、ノルウェーの作曲家、エドヴァルド・グリーグなどのクラシック音楽を取り上げていて、穏やかで堅実な演奏が印象的な作品なのですが、彼の中ではこの卓越したクラシカルなギターの演奏をベースに、クラシック以外の影響も取り込んだ音楽が、AMVIで、そこからこの「Communication」は、マンドリンや、シンセ、パーカッション、プログラミングを用いながらも、ギュッと余分な装飾は削ぎ落としたように聴こえる、ミニマルな美しさ、厳かなムードが、作為的ではなく自然と浮かび上がるような繊細なサウンドアレンジ。Max Ananyevの個性が織り込まれながらも、すっきりとした聴き心地の良いサウンドスケープからは、ニューエイジや、牧歌的、アンビエントな言葉が思い浮かぶ、静謐な、これまでありそうでなかった感覚の余韻を生み出しています。ここ最近のPreserved Soundのリリースの中でもベストに入る作品ではないでしょうか。
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