n5MDの代表的アーティストで、サンフランシスコ在住のアーティストTim Arndtによるソロ・プロジェクトNear the Parenthesisの最新作がリリースされました。かつては…と言ってはいけないんだろうけど、少なくとも自分の中では、IDM(インテリジェント・ダンス・ミュージック)というジャンルの中でも好きなアーティストの一人だったので作品が出るたびにチェックはしていたものの、ここ数作は、ビートもにもすっかり食傷気味になってしまったところもあって、2010年の「Music For The Forest Concourse」以降の2作品についても、わかりやす過ぎるというか、作風か単調というか、残念ながら個人的には縁遠くなってしまった感もあったんですが、最新作は、ビートレスのアンビエント・コンセプト・アルバムということで、これまでの作風はそのままに、ビートを省いただけ、といえば簡単なんですが、これが思った以上に素敵な作品だったので、仕入れてみました。
2006年にリリースした1st『Go Out and See』の後、作曲を中心にしたビートレスのアンビエントを作るアイデアがあったらしいのですが、10年の時を経た現在のNear the Parenthesisだからこそ生み出せる、エモーショナルで魅力あるアンビエントがこの作品で静かに展開されています。元々、ピアノなど生楽器を用いたクラシカルな要素を組み入れ、そこに、緻密なビートを溶け込ませることによって、オーガニックでドリーミーなIDM/エレクトロニカサウンドを生み出していたわけですが、このビートを排除することで、Near the Parenthesisの中にある、メロディアスな旋律がより際立つものとなっています。
美しいピアノのメロディーや、粒子のように細かなデジタルサウンドによって生み出される、まさに、Near the Parenthesisらしい、IDM/エレクトロニカラインのサウンドメイキングなのですが、ここ最近のポストクラシカル作品とはまた別の、詩的でメランコリックなアンビエントと、綿密に練り上げられたであろう、より円熟味を感じさせるシネマティックなサウンドスケープは、Heliosや、Hammock、など、ポストロック/シューゲイザー寄りのリスナーにも伝わるのではないでしょうか?