アコーステックギターで奏でる瞑想的でロマンチックな魅力の2作品
Rick Deitrickのことは、Tompkins Square recordsをチェックしていなかったら、きっと一生知ることのないギタリストだったかもしれない。
オハイオ出身のロサンゼルス在住、Rick Deitrick唯一のオリジナルリリース作品は、1978年にニオドララ・レコード(といってもプライベートレーベル)からリリースしたソロ・ギター・レコード『Gentle Wilderness』を500枚プレスしたのみ。完全に時代に取り残されたかのような作品ではあるけれど、作品そのものは、Rick Deitrick独特のオープンチューニングで奏でられる、瞑想的でロマンチックな音楽が、今も作品に息づいている。まるで昨日リリースされた作品のような現代的佇まいを持った作品です。
アメリカの風景を介した彼のインスピレーションを元に、山や川から直接スタジオへ行き来し録音された『Gentle Wilderness』。独特のフィンガーピッキングスタイル故の、トラディショナルなスタイルで奏でられるフォークミュージックとは少し違った現代的な佇まい。テネシー州のナッシュヴィルを中心に活動をしていたカーリー・プットマン・ジュニアが、1965年に発表し、後にトム・ジョーンズがヒットさせた”Green, Green Grass Of Home”(思い出のグリーングラス)や、ウディーガスリーやドク・ワトソンの歌唱でも知られる”Crawdad Song”といったトラディショナルな楽曲のカヴァーを織り込みながら、1音1音爪弾かれるギターの響きからは、彼のインスピレーション源となった自然をもう一度深く見直し、小さな水彩画のように、または細い詩であるかのように、静かで美しい虚構が映し出されている。
01. At Morning
02. For Marsha
03. Missy Christa
04. Koto Rain
05. Jon’s Song
06. Crawdad Hole
07. Deep Within The Forest Of The Heart
08. Green Green Grass Of Home
09. Gentle Wilderness
そして、『River Sun River Moon』は、デビューと同じ時期に録音されていた未発表音源で構成された作品。未発表とはいえ、個人的には、こちらの作品の方が楽曲の内容は親しみやすいかな。『Gentle Wilderness』が様々な風景を表現し、自然と向き合った自らの存在を映し出しているような、やや大げさにいうと瞑想的でもある作品なのに対し、『River Sun River Moon』は、のどかな田園風景にぴったりな優しいギターの、ぬくもりある調べがとても落ち着きます。とはいえ、どちらも甲乙つけがたい穏やかな魅力を持った作品には変わりありません。
01. Morningstar
02. Abedonia
03. Sparrows
04. Shenandoah
05. River Sun
06. River Moon
07. Wide River
08. Twilight Caravan
09. Away
10. Ballet La Jeunesse