Rumer「Nashville Tears」(Cooking Vinyl)
パキスタン生まれのイギリスのシンガーソングライター、Rumerのことを知ったのが、2007年に、UKのレーベル LITTLE LEAGUEからリリースされた、Rumer And The Denials名義の7インチ、「Come To Me High」だったけど、そのときは、たった1曲だけにもかかわらず、その歌声や楽曲の持つ、聴き心地の良いソフトな耳あたりに釘付けになった記憶があります。その後は、メジャーデビューとなり、当店的にはちょっと疎遠になったのですが、久しぶり耳にした、5枚目となるアルバム「Nashville Tears」での、Rumerの歌唱に、すっかり満たされてしまった。
2016年に、Burt BacharachとHal Davidの曲を歌った4枚目のアルバム『This Girl’s in Love: A Bacharach and David Songbook』リリースして以降、音楽のスポットライトから離れてアメリカ南部アーカンソーの田舎でひっそりと暮らしていたという(地元のヘアサロンでアルバイトをしていたとあるけど本当か?)。そんな時、彼女が夢中になっていたのが、カントリー・ミュージック。「Nashville Tears」のプロデューサー、フレッド・モーリンが彼女に「オクラホマ・ストレイ」というヒュー・プレストウッドの曲を聴かせたことで、彼女はプレストウッドの作品群の”魔法”の洗礼を浴びることになる。
カントリー系のソングライター、Hugh Prestwoodの楽曲と出会い、それが本作「Nashville Tears」へと繋がってゆくのですが、歌い手、そして作曲双方の魅力を改めて実感させる作品になったと思う。ジュディーコリンズ、ジャッキー・デシャノンをはじめ、カントリーだけでなくポピュラーミュージックのジャンルでも彼の楽曲は親しまれていますが、この作品には、今まで一度も録音されたことがない曲がほとんどだという。
Rumerとフレッド・モーリンは、ナッシュビルにある、カントリー歌手であるリーバ・マッキンタイアのStarStruck Studiosで、ナッシュビルの最高レベルのスタジオ・ミュージシャンたちと『Nashville Tears』を録音することになるのですが、レコーディングにはHugh Prestwoodも駆けつけた模様。
とにかく、『Nashville Tears』は、カントリーミュージックのイメージするものとは全く異次元の、素晴らしい演奏家たちの、ため息が出るような演奏と、Hugh Prestwoodの美しい楽曲、それら本来持つ魅力以上のものを引き出すRumerの歌唱がたまらなく素晴らしい。ストリングスアレンジや、アコーステックギター、渋味のあるペダルスティールの音色、そしてそれらは全て、歌を大切にした演奏へとつながっている。安心して浸れる、イギリス人が歌う、極上のアメリカンポピュラーミュージックです。
01. The Fate of Fireflies
02. June It’s Gonna Happen
03. Oklahoma Stray
04. Bristlecone Pine (Ft Lost Hollow)
05. Ghost In This House
06. Deep Summer In The Deep South
07. Heart Full Of Rain
08. Hard Times For Lovers
09. Starcrossed Hanger of the Moon
10. The Song Remembers When
11. That’s That
12. Here You Are
13. Learning How To Love
14. The Snow White Rows of Arlington
15. Half The Moon