ロシアのレーベル、DRONARIVMから素晴らしいコラボレーション作がリリースされました。イランのサナンダージを拠点とする実験的なサウンドアーティストで、Line、Karl Records、n5MD、Tench、Dronarivm、Hibernate Recordings、Time Released Soundなど数多くのレーベルより作品をリリースする、Porya Hatami、アメリカ/カンザス在住のチェリストであり、マルチ奏者でもある、Aaron Martin、イタリアのピアニストで、1631 Recordingsや、Memory Recordings(日本で紹介されているFabrizio Paterliniが在籍するレーベル)から配信を中心に作品をリリースしている、Roberto Attanasioという面々。
彼らが織りなす、うっとりするほどの音のさざなみの中に、淡く古い記憶が、穏やかな流れを生み、そして新しい旋律を奏でる。アルバム・タイトルの『Sallow』は、イラククルド人自治区の公用語であるクルド語。他にトルコ、イラン、シリア等でクルド人により話されるこの言葉は、「時間の経過」を表す意味を持ち、3人のサウンドアーティストがその共通の概念を抱きながら、音楽で見事に表現しています。
おそらく、Porya Hatamiによる電子音と環境音、Aaron Martinのチェロ、そしてRoberto Attanasioによるピアノによるアコーステック楽器の調べは、内なる時の記憶につながってゆく。ことさら温和なアンビエントでもない、ときの移ろいのさざなみに、彼らの音楽は、一抹の憂愁をたたえながら、静かに漂っているかのようでもあります。