The Green Kingdom「Springhill」(Hidden Vibes)

作品がリリースされるたびに、無条件でオーダーする音楽家はそうそう多くはいないけれど、ミシガン州を拠点に活動するMichael Cottoneのソロプロジェクト、The Green Kingdomは、作品が出るたび、楽しみにしている数少ない音楽家の一人。最新作「Springhill」も、彼の作風の根っこは変わらないけれど、これまでの作品とは緩やかな違いを感じさせつつも、聞き終えると、あたたかいものが心に残るサウンドを聴かせてくれる。

幻想的でリズミックなシンセの音色とともに、爪弾かれるアコーステックギターの調べ。ふわりとフェードインされるエレキギターのアンビエンスとフィールドレコーディングを交えたサウンドが、日常の風景を一気に、遙かなる異郷に変わる。「Home」をテーマにした本作は、これまでの作品以上にあたたかで、夢見心地な、サウンドとなっていますが、それだけで作品レビューを終えてしまうのはもったいないくらい、本作は、ギターなど生楽器とエレクトロニクスとの印象的な旋律を、繊細に緻密に織り込むように作りあげている。

Michael Cottoneは本作について、「私たちの日常の存在をサウンドトラックにして、私たちを取り巻いている、見落とされがちな美しさに感謝するための小さなテーマです」と説明する。印象的なのが、作品全体に、レトロ・モダンな電子音やシンセのサウンドが展開されている点で、このサウンドと、The Green Kingdomならではのアコーステックスタイルの演奏が交わることで、ただ単に、音を重ね合わせただけでは生まれない、音の重なり合う瞬間、そして隙間に生まれる詩情は、普段何気にすれ違っていながらも、見落としてしまっている何かとを繋ぐサウンドとなって、聴く人の記憶を呼び起こす。

Michael Cottoneのインスタグラムを見ていると、時折、今聴いているレコードを紹介していることが多いのですが、そのどれもが自分と世代も近いのかもしれないけど、彼の音楽の好みと、その幅の広さにいつも興味を持って見ている。ちょうど「Springhill」の作品が出る前に、ヴィンテージシンセのマエストロ、Ploneの新作「PUZZLEWOOD」を紹介していて、それからの本作の流れを聴くと、なるほどなぁ、と腑に落ちるところもあった。

今回のリリースは、Endless Melancholy主宰のウクライナのレーベルHidden Vibesからで、Deluxe Editionとして、中央に金属のプレートを付けた布製の本型特殊パッケージとなっています。通常盤は、エンベロープ型の紙パッケージでこの紙質もなかなかに上質なもの。ただ残念なのは、公開されているアートワークが素敵なのにそれがパッケージでは入っていないんですよね。オフィシャルに紹介されているアートワークと音楽がつながっていてとても素敵だったので、できればこのリーフのアートワークも封入してほしかったぁ。


01. Morning Walk
02. A Painting of Mountains in the Clouds
03. Picture Window
04. Heron Flight
05. Mayloops
06. Sky Trails
07. Coastal Breeze (Pondmix)
08. Anam Cara
09. Rose Garden
10. Saint Lawrence

PASTEL RECORDSストアで販売中です
PASTEL RECORDS STOREはこちら!


PASTEL RECORDS STOREは、「好奇心とやすらぎの音楽」というキーワードで、世界のインディペンデント・ミュージックより、美しく、個性的で、心がこもっていて、気取っていない、日々の生活の中でも、やわらかな刺激を与えてくれる心地よい音楽をセレクトしご紹介しております。
関連記事