82年に、バシンスキー自宅のスタジオにてピアノとテープを用い制作されたライブレコーディング作。
William Basinski(ウィリアム・バシンスキー)の、1982年にレコーディングされ、2009年に自身のレーベル、2062よりCDでリリースされていた、「98982」が、Temporary Residenceよりアナログでリリースされました。
スティーヴ・ライヒやブライアン・イーノなどのミニマリスト達にインスパイアされ、テープループと古いオープンリール式のテープデッキを使い生み出される、短くも儚いメロディーのループアンビエント。本作は82年に、NYブルックリンにあるバシンスキーの自宅のスタジオにてピアノとテープを用い制作されたライブレコーディング作。
まるで荘厳なシンフォニーのように、または、古いラジオから流れてくる幽玄な賛美歌のように、またはピアノの旋律を幾重にも重ね合わせたり…。窓を全部開け放しで録音を行ったため、2曲目の”92982.2″では、サイレンやヘリコプター、花火の音など街の喧噪音までも一緒にミックスされているのが確認できます。ただそんな周りの環境をも包み込んでしまう、果てしなく続くメランコリックなアンビエントのまどろみの中で、その輪郭は静かに溶解してゆく。ミニマルに繰り返されるバシンスキーの美しいドローン〜アンビエントは、まるで時を経た人間の痕跡が、自然の浸食に晒され風化してゆく有様を描いているようにも感じ取れます。
リマスタリングされた、アナログ2枚組仕様。そして、CDは、プラケースのちょっとそっけないものだったのですが、レコードの方は、ジャケットにダイカットされたなかなかの凝りようで、手にした時の満足感がたまりません。傑作にふさわしい、素敵なもので、ウィリアム・バシンスキーの代表作の一つにふさわしいリリースとなっています。全60分4曲収録。